足のすねや、くるぶしの周りが、両側性にむくんでいる。そして、そのむくみと共に、「階段を上ると息が切れる」「夜、横になると咳が出て苦しい」「少し動いただけでも動悸がする」といった、息切れや呼吸困難の症状を伴う場合、それは、血液を全身に送り出すポンプである「心臓」の機能が低下している、「心不全」の重要なサインである可能性があります。このような症状が見られる場合に、受診すべき専門診療科は「循環器内科」です。心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が弱まり、全身の組織が必要とする量の血液を、十分に送り出せなくなった状態を指します。心臓から送り出される血液量が減ると、それを補うために、体は血液の量を増やそうとします。その結果、体全体の水分量が増え、特に、重力の影響を受けやすい下半身(足)に、余分な水分が溜まって、むくみが現れるのです。また、血液の渋滞(うっ血)が、肺にまで及ぶと、肺に水が溜まり(肺水腫)、息切れや呼吸困難、横になると悪化する咳といった、特徴的な症状を引き起こします。心不全によるむくみの特徴は、指でむくんでいる部分を強く押すと、その跡がしばらくへこんだまま残る「圧痕性浮腫(あっこんせいふしゅ)」であることです。循環器内科では、まず問診と聴診で、心不全の兆候を捉えます。そして、診断を確定させるために、いくつかの専門的な検査を行います。「胸部X線(レントゲン)撮影」では、心臓が拡大していないか(心拡大)、肺に水が溜まっていないかを確認します。「心電図検査」では、心不全の原因となる、不整脈や心筋梗塞の兆候がないかを調べます。「血液検査」では、心臓に負担がかかると分泌されるホルモンである「BNP」または「NT-proBNP」の値を測定します。この値が高いほど、心不全の可能性と重症度が高いと判断できます。そして、最も重要な検査が「心エコー(心臓超音波)検査」です。この検査では、リアルタイムで心臓の動きを観察し、ポンプ機能がどの程度低下しているか、心臓の弁に異常はないか(弁膜症)、心臓の筋肉に問題はないか(心筋症)などを、詳細に評価することができます。心不全は、適切な治療(利尿薬、心臓を保護する薬など)と、塩分・水分制限などの自己管理によって、症状をコントロールし、進行を遅らせることが可能な病気です。命に関わるサインを見逃さず、早期に専門医の診察を受けてください。