大切なプレゼンテーションや面接、大勢の人の前でのスピーチなど、強いストレスや緊張を感じる場面で、声が上ずったり、心臓がドキドキしたりすると同時に、マイクや資料を持つ手がブルブルと震えてしまった経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。このような緊張場面で起こる手の震えは、「生理的振戦の増強」と呼ばれる現象で、基本的には誰にでも起こりうる正常な身体反応です. 病気ではありません。私たちの体は、緊張や興奮、不安を感じると、交感神経が活発になります。すると、アドレナリンなどのホルモンが分泌され、心拍数の増加や筋肉の緊張を引き起こします。この筋肉の細かな収縮が、目に見える形での「震え」として現れるのです。これは、体がストレス状況に対応しようとするための、いわば戦闘準備のような状態であり、その状況が過ぎ去れば自然と収まります。そのため、たまに緊張した時に震える程度であれば、特に心配する必要はありません。しかし、この震えが日常生活や社会生活に支障をきたすほど頻繁に、あるいは強く現れる場合は、注意が必要です。例えば、「また震えるのではないか」という予期不安から、人前に立つことを避けるようになったり、会食などの場面でコップを持つのが怖くなったりする場合です。このような状態は、「社交不安障害(SAD)」などの不安障害の一症状として現れている可能性があります。また、震えの原因が純粋な精神的ストレスだけではなく、他の病気が背景にあることも考えられます。例えば、甲状腺機能亢進症は、代謝が異常に高まるため、常に体が興奮状態にあり、手の震えや多汗、動悸などを引き起こします。また、血糖値が下がりすぎる低血糖の状態でも、冷や汗と共に震えが生じます。カフェインや特定の薬の副作用が、生理的な震えを悪化させているケースもあります。もし、緊張時以外のリラックスしている時にも震えがある、震え以外に体重減少や動悸などの身体症状がある、震えに対する不安が強すぎて日常生活に影響が出ている、といった場合は、一度医療機関に相談することをお勧めします。まずはかかりつけの内科で身体的な異常がないかを確認し、必要であれば心療内科や精神科でカウンセリングや適切な治療を受けることが、過剰な震えの悩みから解放されるための道筋となります。
子供の花粉症、何科に連れて行く?小児科医の視点
大人だけでなく、近年は子供の花粉症も増加傾向にあります。くしゃみや鼻水を連発し、目を真っ赤にしてこする我が子の姿を見るのは、親として非常につらいものです。子供の症状に気づいた時、多くの保護者の方が「まずは小児科?それとも専門の耳鼻科や眼科?」と迷われることでしょう。結論として、小さなお子さんの場合は、まず「小児科」を受診するのが最も安心で確実な選択です。小児科医は、子供の成長・発達全般を理解している専門家です。花粉症の症状だけでなく、子供特有の体質や、他の病気が隠れていないかといった総合的な視点で診察してくれます。例えば、鼻水や鼻づまりが、単なる花粉症ではなく、風邪や副鼻腔炎(蓄膿症)を併発している可能性も考えられます。小児科であれば、こうした合併症の可能性も念頭に置いて診察し、適切な判断を下すことができます。また、薬の処方においても小児科の受診には大きなメリットがあります。子供は大人と違い、体の大きさや体重、内臓機能の発達段階によって、使える薬の種類や量が厳密に定められています。小A児科医は、個々の子供の年齢や体重に合わせた最適な薬を、安全性を最優先に考えて選択してくれます。眠気の副作用が子供の日常生活や学業に与える影響なども考慮し、生活リズムに合わせた薬の飲み方などを丁寧に指導してくれるでしょう。もちろん、症状が非常に重い場合や、専門的な治療が必要だと判断された場合には、小児科医が信頼できる耳鼻咽喉科や眼科、アレルギー科の専門医を紹介してくれます。その際も、紹介状を通じて子供の基本情報やこれまでの治療経過を専門医に的確に伝えてくれるため、連携がスムーズです。まずは、普段からお子さんのことをよく知っているかかりつけの小児科医に相談することが、適切な治療への第一歩となります。親が自己判断で市販薬を与える前に、ぜひ専門家である小児科医の診察を受けさせてあげてください。それが、お子さんを安全につらい症状から解放してあげるための最善の方法です。
花粉症は目と鼻だけじゃない!皮膚のかゆみは何科へ?
花粉症といえば、くしゃみ・鼻水・目のかゆみが三大症状として知られていますが、実は悩まされているのは粘膜だけではありません。春先になると、顔や首、腕など、露出している部分の皮膚がカサカサしたり、赤くなってかゆみが出たりする「花粉皮膚炎」という症状に悩む人が増えています。これは、花粉が直接皮膚に付着し、皮膚のバリア機能を突き破って炎症を引き起こすことで起こると考えられています。特に、もともとアトピー性皮膚炎などの乾燥肌・敏感肌の人は、皮膚のバリア機能が低下しているため、花粉皮膚炎を発症しやすい傾向にあります。では、このような皮膚症状が現れた場合、何科を受診すればよいのでしょうか。最も適しているのは、もちろん皮膚の専門家である「皮膚科」です。皮膚科では、症状を詳しく観察し、それが本当に花粉によるものなのか、あるいは他の皮膚疾患(例えば、接触皮膚炎やアトピー性皮膚炎の悪化など)ではないのかを的確に診断してくれます。治療としては、まず炎症を抑えるためのステロイド外用薬(塗り薬)が処方されるのが一般的です。同時に、皮膚のバリア機能を回復させ、外部からの刺激を守るための保湿剤も処方されます。かゆみが強い場合には、花粉症の鼻炎や結膜炎でも使われる抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の飲み薬を併用することもあります。これにより、体の内側と外側の両方から症状を抑えることができます。もし、皮膚症状だけでなく、鼻や目の症状も同時にひどい場合は、「アレルギー科」を受診するのも良い選択です。アレルギー科では、皮膚、鼻、目といった全身のアレルギー症状を総合的に診て、トータルで治療方針を立ててくれます。血液検査で、どの花粉に対してアレルギーがあるのかを特定することも可能です。一方で、まずはかかりつけの内科や耳鼻咽喉科で相談してみるという方法もあります。そこで、一般的な抗アレルギー薬を処方してもらい、それでも皮膚症状が改善しない場合に、改めて皮膚科を紹介してもらうという流れもスムーズです。いずれにしても、ただのかゆみだと自己判断で市販のかゆみ止めを塗り続けるのではなく、専門医に相談することが重要です。適切な診断と治療を受けることが、つらい皮膚のかゆみから解放されるための近道です。
舌下免疫療法を始めたい!何科で相談できる?
毎年の花粉症シーズンを、ただ薬で症状を抑えるだけでなく、「根本から治したい」と考えている方に、今、大きな希望となっているのが「舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)」です。これは、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少量ずつ、長期間にわたって体に投与し続けることで、体をアレルゲンに慣れさせ、アレルギー反応そのものを和らげたり、起こしにくくしたりする治療法です。現在、保険適用となっているのは「スギ花粉症」と「ダニアレルギー」です。この画期的な治療法に興味を持った時、最初に疑問に思うのが「どこで、何科で相談すればいいのか?」ということでしょう。舌下免疫療法の相談・治療を行っている主な診療科は、「耳鼻咽喉科」と「アレルギー科」です。スギ花粉症は鼻の症状が主体となることが多いため、多くの耳鼻咽喉科で舌下免疫療法が積極的に導入されています。鼻の粘膜の状態を直接観察できる耳鼻咽喉科医は、治療の適応があるかどうかを的確に判断し、治療開始後の鼻症状の変化も専門的にフォローアップしてくれます。お近くの耳鼻咽喉科のウェブサイトなどで、「舌下免疫療法実施医療機関」といった記載があるか確認してみると良いでしょう。アレルギー科は、花粉症だけでなく、食物アレルギーや気管支喘息など、アレルギー疾患全般を専門とする科です。複数のアレルギーに悩んでいる方や、より専門的な立場からのアドバイスを求める場合に適しています。また、「内科」や「小児科」でも、舌下免疫療法を実施している医療機関があります。かかりつけの内科や小リ児科で相談できれば、これまでの病歴や体質をよく理解してくれている医師のもとで治療を開始できるという安心感があります。治療を始めるには、まず血液検査で、本当にスギ花粉(あるいはダニ)に対するアレルギーがあることを確定させる必要があります。その上で、医師が適応があると判断すれば治療がスタートします。治療は、1日1回、舌の下に治療薬を数分間保持してから飲み込む、という方法を毎日自宅で行います。これを3~5年程度継続する必要があります。根気のいる治療ですが、正しく続ければ約8割の人に効果があるとされ、将来にわたって症状が軽くなったり、薬の量を減らせたりする大きなメリットが期待できます。興味のある方は、まずは上記の診療科に問い合わせて、相談してみてはいかがでしょうか。