足だけでなく、お腹もカエルのようにパンパンに張ってきて、息苦しさを感じる。そして、皮膚や、白目の部分が、黄色っぽく変色している(黄疸)。このような、腹水や黄疸といった特徴的な症状を伴うむくみは、血液の工場とも言われる重要な臓器、「肝臓」の機能が、著しく低下している「肝硬変」や「肝不全」のサインである可能性が非常に高いです。この場合、受診すべき専門診療科は、「消化器内科」または「肝臓内科」です。肝臓は、私たちの体に必要な、様々な種類のタンパク質を合成する、重要な役割を担っています。その中でも、血液中に最も多く含まれるタンパク質が「アルブミン」です。アルブミンは、血管の中に水分を保持する、スポンジのような働き(膠質浸透圧)をしています。しかし、肝硬変などで肝臓の機能が低下すると、このアルブミンの産生能力が著しく落ちてしまいます。血液中のアルブミン濃度が低下すると、血管内の水分を保持する力が弱まり、水分が血管の外の組織へと漏れ出しやすくなります。これが、肝臓病によるむくみの、主なメカニズムです。特に、腹腔内というスペースに大量の水が溜まった状態が「腹水」であり、足にもむくみが現れます。また、肝硬変が進行すると、肝臓を通るべき血液が、スムーズに流れなくなり、渋滞を起こします(門脈圧亢進症)。これにより、静脈の圧力が高まることも、むくみや腹水を助長する要因となります。黄疸は、本来、肝臓で処理されるべきビリルビンという黄色い色素が、処理しきれずに血液中に溢れ出て、皮膚や粘膜に沈着することで起こります。肝硬変の主な原因は、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの持続感染、あるいは、アルコールの長期多飲による「アルコール性肝障害」、そして近年増加している、肥満や糖尿病を背景とした「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」などです。消化器内科では、血液検査で肝機能やアルブミンの値、ウイルスマーカーなどを調べ、腹部超音波(エコー)検査やCT検査で、肝臓の形や、腹水の有無を評価して、診断を下します。治療は、原因となっている肝臓病そのものの治療と並行して、塩分制限や、余分な水分を排出させるための「利尿薬」の投与が行われます。