甲状腺の病気が疑われて、専門の医療機関を受診した場合、診断を確定させるために、いくつかの系統だった検査が行われます。どのような検査が行われるのかを、事前に知っておくことで、受診への不安を和らげることができます。診断の第一歩は、非常に詳細な「問診」と「身体診察」から始まります。医師は、自覚症状(動悸、体重変化、倦怠感など)や、その経過、過去の病歴、家族歴などを詳しく聞き取ります。そして、首を直接触診し、甲状腺の大きさや硬さ、しこりの有無などを、注意深く確認します。次に、診断の根幹となるのが「血液検査」です。ここで測定するのは、主に3つのホルモンです。①甲状腺ホルモン(FT3, FT4): 甲状腺から直接分泌されるホルモンで、体の新陳代謝のアクセルの役割を果たします。この値が高いと機能亢進症、低いと機能低下症が疑われます。②甲状腺刺激ホルモン(TSH): 脳の下垂体から分泌され、甲状腺に「ホルモンを出せ」と指令を送るホルモンです。甲状腺の機能が低下すると、TSHは「もっと頑張れ」とばかりに高くなり、逆に機能が亢進すると、TSHは低くなります。この、甲状腺ホルモンとTSHのバランスを見ることが、診断の基本となります。③自己抗体: バセドウ病や橋本病は、自己免疫疾患であるため、その原因となる自己抗体(TRAb, TPO抗体, Tg抗体など)の有無を調べることで、診断を確定させます。形態的な異常(腫れやしこり)を評価するために、最も重要な検査が「超音波(エコー)検査」です。ゼリーを塗った首の表面から、超音波の出る機械を当てる、体に全く負担のない検査です。甲状腺の大きさや、内部の血流の状態、しこりの有無や、その性状(良性か悪性か)を、非常に詳細に評価することができます。エコー検査で、がんが疑われるようなしこりが見つかった場合は、診断を確定させるために、「穿刺吸引細胞診」が行われます。これは、エコーでしこりの位置を確認しながら、細い針を刺して、中の細胞を吸引し、顕微鏡で調べる検査です。その他、バセドウ病の診断や、しこりの機能評価のために、微量の放射性ヨウ素を用いて、甲状腺の働きを画像化する「甲状腺シンチグラフィ」という検査が行われることもあります。これらの検査結果を総合的に判断し、診断と、その後の治療方針が決定されます。