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花粉症の予防につながる食べ物とは
つらい花粉症の症状を和らげるためには、薬やマスクといった外からの対策だけでなく、日々の食生活を見直し、体の内側からアレルギーに負けない体質を作っていくという視点も非常に重要です。特定の食品を食べれば、花粉症が完全に治るというわけではありませんが、症状の緩和に役立つとされる栄養素を、意識的に食事に取り入れることで、つらい季節をより快適に過ごすための助けとなります。近年、アレルギーと深く関わっているとして注目されているのが「腸内環境」です。腸には、体全体の免疫細胞の約7割が集中していると言われており、腸内環境を整えることが、免疫システムのバランスを正常に保ち、アレルギー反応を抑制する上で重要だと考えられています。そのために、積極的に摂りたいのが、ヨーグルトや納豆、味噌といった「発酵食品」です。これらに含まれる乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌は、腸内の悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を改善してくれます。また、善玉菌のエサとなる、野菜や果物、海藻類に豊富な「食物繊維」や、オリゴ糖を一緒に摂ることで、さらに効果が高まります。青魚(サバ、イワシ、アジなど)に多く含まれる「EPA」や「DHA」といった、オメガ3系の脂肪酸も、症状の緩和に役立つとされています。これらの脂肪酸には、アレルギー症状を引き起こす、体内の炎症を抑える働きがあるのです。また、野菜の中では、レンコンに含まれるポリフェノールや、玉ねぎに含まれるケルセチンといった成分が、アレルギー反応を引き起こすヒスタミンの放出を抑える効果が期待できるとして、注目されています。一方で、症状を悪化させる可能性があるため、摂りすぎに注意したい食品もあります。高脂肪・高タンパクな食事や、インスタント食品、スナック菓子などの加工食品は、腸内の悪玉菌を増やし、免疫バランスを乱す原因となり得ます。また、アルコールは、血管を拡張させて、鼻づまりや目の充血を悪化させたり、ヒスタミンを増やす原因になったりするため、症状がひどい時期は控えるのが賢明です。日々の食事に、これらの知識を少し取り入れるだけで、体はきっと応えてくれるはずです。
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なぜ薬を10日間も?合併症予防という重要な意味
溶連菌感染症と診断されると、医師から、通常10日間という、比較的長い期間の抗生物質が処方されます。高熱や喉の激痛といったつらい症状は、抗生物質を飲み始めてから2、3日もすれば劇的に改善することがほとんどです。すると、「もうすっかり良くなったから、薬を飲むのはやめてしまおう」と、自己判断で服用を中止してしまう人が、残念ながら少なくありません。しかし、この行為こそが、溶連菌感染症の治療において最も危険で、絶対にやってはいけないことなのです。なぜ、症状が消えた後も、抗生物質を飲み続ける必要があるのでしょうか。その最大の理由は、溶連菌感染症が引き起こす可能性のある、特殊で、かつ重篤な「合併症」を、確実に予防するためです。溶連菌感染症の合併症には、感染の急性期に起こるものと、感染が治まったように見えた後、数週間経ってから時間差で発症してくるものがあります。後者の代表が、「リウマチ熱」と「急性糸球体腎炎」です。リウマチ熱は、溶連菌に対する体の免疫反応が、誤って自分自身の体の組織、特に心臓の弁や関節、神経を攻撃してしまう、自己免疫疾患に似た病態です。心臓に障害が残ると、将来的に「弁膜症」という後遺症を残すことがあります。急性糸球体腎炎は、同じく免疫反応の異常によって、血液を濾過する腎臓の糸球体に、急性の炎症が起こる病気です。血尿や蛋白尿、むくみ、高血圧といった症状が現れ、稀に急性の腎不全に至ることもあります。これらの合併症は、喉にいる溶連菌そのものが、直接心臓や腎臓に感染して起こるわけではありません。生き残った少数の菌に対する、体の「免疫の暴走」が、本当の原因なのです。症状が治まっても、喉の奥には、まだ少数の溶連菌が潜んでいる可能性があります。抗生物質を10日間しっかりと飲み続けることで、これらの菌を完全に体内から除去し、免疫の異常反応が起こるきっかけそのものを、根絶することができるのです。つらい症状を治すためだけでなく、将来の深刻な病気から自分の体を守るために、処方された抗生物質は必ず最後まで飲み切ってください。
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病院を受診するタイミングと、夜間・休日の判断
子どもが手足口病を疑う症状を見せた時、保護者としては、どのタイミングで病院へ連れて行くべきか、特に夜間や休日に症状が出た場合に、救急外来を受診すべきかどうか、判断に迷うことが多いでしょう。手足口病は、基本的に予後が良好なウイルス性疾患であり、特効薬もないため、全てのケースで緊急受診が必要なわけではありません。適切な受診のタイミングを見極めるための、具体的な目安について解説します。まず、比較的症状が軽く、「日中の診療時間内の受診で十分」と考えられるケースです。それは、①熱があっても、38度台前半までで、比較的機嫌が良い、②口の中を痛がってはいるものの、母乳やミルク、あるいは水分を、少しずつでも飲めている、③手足の発疹は出ているが、かゆみや痛みがそれほど強くなく、普段通りに遊べている、といった状態です。このような場合は、慌てて夜間救急に駆け込む必要はなく、家庭での水分補給やケアを続けながら、翌日の日中に、かかりつけの小児科を受診すれば問題ありません。一方で、「夜間や休日であっても、速やかに受診すべき」危険なサインもあります。最も重要なのが、「脱水症状」の兆候です。口の痛みのために、水分を全く受け付けず、「半日以上おしっこが出ていない」「唇や口の中がカサカサに乾いている」「泣いても涙が出ない」「ぐったりしていて、活気がない」といった症状が見られた場合は、点滴による水分補給が必要なため、直ちに医療機関を受診してください。また、ごく稀ですが、手足口病は、重篤な合併症を引き起こすことがあります。特に、中枢神経系の合併症である「無菌性髄膜炎」や「急性脳炎」を疑うべきサインには、最大限の注意が必要です。具体的には、「高熱が2日以上続く」「頭をひどく痛がる(特に年長児)」「嘔吐を何度も繰り返す」「呼びかけへの反応が鈍い、意識がもうろうとしている」「けいれんを起こした」といった症状です。これらの症状が一つでも見られた場合は、絶対に様子を見ず、夜間や休日であっても、ためらわずに救急病院を受診するか、救急車を呼んでください。子どもの様子が「いつもと違う」と保護者が感じた直感は、非常に重要です。不安な場合は、#8000(小児救急電話相談)に電話して、専門家の助言を求めるのも良い方法です。
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自律神経の乱れが招く夏バテの正体
夏になると多くの人が口にする「夏バテ」。その主な症状は、全身の倦怠感、食欲不振、無気力、立ちくらみ、頭痛など、多岐にわたります。この、病気とは診断されないものの、非常につらい夏特有の体調不良の、最大の黒幕と考えられているのが、「自律神経の乱れ」です。自律神経は、私たちの意思とは関係なく、呼吸や心拍、体温、消化、発汗といった、生命維持に不可欠な機能を、24時間体制でコントロールしている、体の司令塔です。自律神経には、体を活動的にする「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」の二種類があり、これらが、まるでアクセルとブレーキのように、絶妙なバランスを取り合うことで、私たちの体は、内外の環境の変化に、しなやかに対応しています。しかし、夏の過酷な環境は、この繊細なバランスを、容赦なく狂わせてしまいます。最大のストレス要因が、屋外の猛暑と、冷房の効いた室内の「激しい温度差」です。暑い屋外では、体は熱を逃がすために、血管を拡張させ、汗をかきます(副交感神経が優位)。一方、涼しい室内に入ると、今度は体温を逃さないように、血管を収縮させます(交感神経が優位)。この、アクセルとブレーキを、一日のうちに何度も、急激に踏み替えるような状況に、自律神経は対応しきれず、疲弊して、正常に機能しなくなってしまうのです。自律神経のバランスが崩れると、その支配下にある、全身の様々な臓器に、不調が現れます。胃腸の働きが低下して、食欲不振や消化不良、下痢を引き起こしたり、血管の収縮・拡張のコントロールがうまくいかず、立ちくらみや頭痛、肩こりを招いたりします。また、体温調節機能そのものが低下し、体に熱がこもりやすくなり、倦怠感や疲労感が、常に付きまとうようになります。これが、夏バテの正体です。夏バテを防ぐためには、この自律神経の酷使を、いかに避けるかが鍵となります。
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口の中の痛みがひどすぎる場合は「耳鼻咽喉科」
手足口病の症状の中でも、特に子どもや大人を苦しめるのが、口の中にできる、多数の痛みを伴う水疱と、それが破れた後の潰瘍(口内炎)です。この口の中の痛みが、他の症状に比べて、群を抜いてひどい場合、例えば、「つばを飲み込むことさえ激痛で、全く水分が摂れない」「痛みで夜も眠れない」「よだれが絶えず口から流れ出ている」といった、深刻な状況に陥っている場合は、「耳鼻咽喉科」を受診することも、非常に有効な選択肢となります。耳鼻咽喉科は、その名の通り、耳・鼻・喉(咽頭・喉頭)の病気を専門とするエキスパートであり、口内炎や咽頭炎といった、口から喉にかけてのトラブルに対して、より専門的な診察と処置を行うことができます。耳鼻咽喉科を受診するメリットは、まず、その「診察の精度」にあります。耳鼻咽喉科医は、ヘッドライトや、場合によってはファイバースコープ(鼻から入れる細いカメラ)を用いて、口の中だけでなく、喉の奥深くの状態までを、詳細に観察することができます。これにより、発疹の範囲や重症度を正確に評価し、似たような症状を示す他の喉の病気(ヘルパンギーナ、溶連菌感染症、扁桃炎など)との鑑別を、より確実に行うことが可能です。そして、最大のメリットが、痛みを和らげるための「専門的な処置」を受けられる点です。多くの耳鼻咽喉科クリニックには、「ネブライザー」という、薬剤を霧状にして吸入する装置があります。局所麻酔薬や、炎症を抑える薬を含んだ霧を、口から吸入することで、薬剤が痛みの強い患部に直接届き、一時的ではありますが、劇的に痛みを和らげることができます。このネブライザー治療によって、痛みが少しでも楽になった隙に、水分や食事を摂ることができるようになるケースも少なくありません。また、医師によっては、痛みが非常に強い潰瘍の部分に、直接、炎症を抑える薬や、粘膜を保護する薬を塗布してくれることもあります。さらに、市販のものよりも強力な、医療用のうがい薬や、痛みを和らげる成分が含まれたトローチなどを処方してもらうことも可能です。口の中の症状が、特につらく、日常生活に大きな支障が出ている場合は、喉の痛みを緩和するプロフェッショナルである、耳鼻咽喉科医の力を借りることを、ぜひ検討してみてください。