-
まとめ。ひどいむくみで迷ったら、まず内科へ
ひどいむくみという、体からのSOSサインに気づいた時、その原因が多岐にわたるため、どの診療科を受診すべきか迷うのは当然です。ここでは、これまでの内容を総括し、あなたが適切な行動をとるための「思考プロセス」を整理します。**大原則:原因がはっきりしない、ひどいむくみで迷ったら、まずは、全身を総合的に診てくれる「一般内科」または「総合診療科」を受診する。**これが、最も安全で、確実な第一歩です。その上で、伴う症状に注目することで、より専門的な診療科への見当をつけることができます。Step 1:「息切れ」や「呼吸困難」を伴うか?「階段で息が切れる」「横になると咳が出る」といった症状と共に、両足がむくむ場合は、心不全の可能性があります。この場合は、「循環器内科」が専門です。Step 2:「尿の異常」や「顔のむくみ」があるか?「尿が泡立つ(蛋白尿)」「尿の量が減った」といった症状と共に、特に朝、顔やまぶたが腫れぼったい場合は、腎臓病を疑います。この場合は、「腎臓内科」が専門となります。**Step 3:「片足だけ」が急に腫れたか?**左右差が明らかな、片足だけの急激な腫れと痛みは、深部静脈血栓症のサインです。緊急性が高いため、直ちに「血管外科」または「循環器内科」を受診してください。**Step 4:「お腹の張り」や「黄疸」を伴うか?**足のむくみだけでなく、お腹に水が溜まって張っていたり、皮膚や白目が黄色くなったりしている場合は、肝臓病の可能性があります。「消化器内科」や「肝臓内科」が専門です。Step 5:「押してもへこまないむくみ」と「全身の倦怠感」があるか?「異常な寒がり」「体重増加」などを伴う、硬いむくみは、甲状腺機能低下症を疑います。「内分泌内科」または「一般内科」へ相談しましょう。この思考プロセスは、あくまで受診の目安です。最も重要なのは、異常なむくみを放置しないことです。まずは、かかりつけの内科医に相談し、診断への正しい道筋をつけてもらう。それが、あなたの体を守るための、最も賢明な行動と言えるでしょう。
-
胃腸の不調、夏の下痢や食欲不振の原因
夏になると、決まって「お腹の調子が悪くなる」という人も、少なくありません。食欲が全く湧かない、あるいは、すぐに下痢をしてしまう。これらの「胃腸の不調」もまた、夏特有の体調不良の、代表的な症状です。その原因は、一つではなく、複数の要因が絡み合って、私たちのデリケートな消化器官を、直撃します。まず、最大の原因が、前述の「自律神経の乱れ」です。胃腸の正常な働き(消化液の分泌や、蠕動運動)は、主に、リラックスしている時に働く「副交感神経」によってコントロールされています。しかし、夏の激しい温度差などで、自律神経のバランスが崩れると、このコントロールが効かなくなり、胃腸の機能が、著しく低下してしまいます。胃の動きが悪くなれば、胃もたれや食欲不振に、腸の動きが異常になれば、下痢や便秘に繋がるのです。次に、「冷たい飲食物の過剰摂取」も、胃腸に直接的なダメージを与えます。冷たいものが、大量に胃腸に流れ込むと、消化管そのものが冷やされ、血行が悪化します。これにより、消化酵素の働きが鈍り、消化不良を引き起こします。消化されなかった食べ物は、腸を刺激し、下痢の原因となります。さらに、夏は「食中毒」のリスクが、一年で最も高い季節です。高温多湿の環境は、サルモネラ菌やカンピロバクターといった、食中毒の原因となる細菌が、増殖するのに最適な条件です。調理した食品の不適切な管理や、バーベキューなどでの加熱不十分な肉の摂取などが、細菌性の胃腸炎を引き起こし、激しい腹痛や下痢、嘔吐、発熱といった症状を招きます。これらの胃腸の不調を防ぐためには、まず、冷たいものの摂りすぎに注意し、意識的に、温かいスープや飲み物を食事に取り入れることが大切です。また、食事は、一度にたくさん食べるのではなく、消化の良いものを、少量ずつ、数回に分けて食べるようにすると、胃腸への負担を減らすことができます。そして、食中毒予防の三原則である「つけない・増やさない・やっつける」を、徹底することが、夏のお腹を守るための、基本中の基本となります。
-
足の裏のしびれや灼熱感、糖尿病や脊椎の病気のサイン?
足の裏の痛みが、単純な「痛み」だけでなく、「しびれ」「ジンジンする」「ピリピリする」「灼熱感(焼けるような感じ)」「砂利の上を歩いているような感覚」といった、感覚の異常を伴う場合、それは末梢神経そのものに障害が起きているサインかもしれません。このような症状の原因は、足局所の問題(前述のモートン病など)だけでなく、全身性の病気や、足から離れた腰のあたりの病気が関わっている可能性があり、その場合は「内科(特に糖尿病内科)」や「整形外科」、「脳神経内科」といった診療科との連携が必要になります。最も注意すべき全身性の病気の一つが「糖尿病」です。長期間にわたって血糖値が高い状態が続くと、全身の細い血管や神経がダメージを受けます。これが「糖尿病性神経障害」と呼ばれる合併症で、手足の末端から症状が現れるのが特徴です。初期には、足の裏や指先に、左右対称性のしびれや痛み、感覚の鈍化などが現れます。感覚が鈍くなるため、怪我をしても気づきにくく、そこから細菌感染を起こして足の壊疽(えそ)に繋がる危険性もあるため、早期の血糖コントロールが極めて重要です。治療は、糖尿病内科が中心となり、血糖管理と薬物療法を行います。また、足の裏のしびれや痛みの原因が、実は「腰」にあることも少なくありません。「腰部脊柱管狭窄症」や「腰椎椎間板ヘルニア」といった病気では、腰のあたりで足へ向かう神経の根本が圧迫されます。これにより、お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、そして足の裏にかけて、痛みやしびれ(坐骨神経痛)が生じることがあります。特徴的なのは、しばらく歩くと足のしびれや痛みが強くなって歩けなくなり、少し前かがみになって休むとまた歩けるようになる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」という症状です。この場合は、腰の専門家である整形外科での診察、MRI検査などが必要となります。その他、ビタミンB12欠乏症や、甲状腺機能低下症、あるいは原因不明の末梢神経障害など、様々な内科的疾患が足裏の異常感覚を引き起こすこともあります。原因がはっきりしない足裏のしびれや痛みで悩んでいる場合は、まずかかりつけの内科医や、整形外科に相談し、全身的な視点から原因を探ってもらうことが大切です。
-
大人の溶連菌は子どもと違う?症状と注意点
溶連菌感染症は子どもの病気というイメージが強いですが、大人が感染すると、子どもとは少し異なる症状の現れ方をすることがあり、注意が必要です。多くの場合、大人が発症すると、子どもよりも症状が「重症化」しやすい傾向にあります。まず、全身症状が非常に強く出ることが特徴です。突然の38.5度を超える高熱や、インフルエンザと見紛うほどの激しい悪寒、ズキズキとした頭痛、そして体中の関節や筋肉が痛む倦怠感に襲われ、起き上がっているのもつらい、という状態になることが少なくありません。喉の痛みも、単なる痛みというよりは、「カミソリの刃を飲み込むような」と表現されるほどの激痛で、食事や水分摂取が全くできなくなることも珍しくありません。仕事や日常生活に、深刻な支障をきたすケースが多いのです。一方で、子どもによく見られる、診断の手がかりとなる特徴的な随伴症状が「現れにくい」という側面もあります。例えば、舌が赤くブツブツになる「いちご舌」や、体中に細かい赤い発疹が広がる「猩紅熱(しょうこうねつ)」は、大人の場合は、典型的には現れないか、あるいは現れても非常に軽微で、見過ごされてしまうことが多いとされています。このため、喉の所見だけでは、他の細菌性扁桃炎や、アデノウイルスなどによるウイルス性の咽頭炎との鑑別が、より難しくなることがあります。だからこそ、迅速診断キットによる確定診断が、非常に重要になるのです。そして、大人が絶対に忘れてはならない注意点が、合併症のリスクは子どもと全く同じように存在する、ということです。特に、感染から数週間後に発症する可能性がある「急性糸球体腎炎」は、血尿やむくみ、高血圧を引き起こす腎臓の病気です。これを予防するためには、処方された抗生物質を、症状が良くなったからといって自己判断で中断せず、必ず指示された期間、最後まで飲み切ることが、絶対的に必要です。大人の溶連菌感染症は、つらい急性期症状と、見えない合併症のリスクという二つの側面から、軽視することなく、確実な治療が求められる病気なのです。
-
花粉症は症状が出る前の予防が鍵
毎年、春になると決まって、つらい花粉症の症状に悩まされる。そんな人は、症状が本格的に現れてから、慌てて薬を飲み始める、というパターンに陥りがちです。しかし、花粉症の治療において、最も効果的で、シーズン中のQOL(生活の質)を大きく左右するのが、実は、花粉が本格的に飛び始める少し前、あるいは、ごく軽い症状が出始めた段階で、治療を開始する「初期療法」という考え方です。なぜ、症状が出る前から治療を始めるのが良いのでしょうか。そのメカニズムを理解するためには、花粉症の症状がどのようにして起こるかを知る必要があります。花粉が、目や鼻の粘膜に付着すると、体はそれを異物(アレルゲン)と認識し、対抗するための抗体(IgE抗体)を作ります。この抗体が、粘膜にあるマスト細胞という細胞に結合し、いわば戦闘準備が整った状態になります。そして、再び花粉が侵入してくると、それが引き金となって、マスト細胞から、ヒスタミンなどの、アレルギー症状を引き起こす化学伝達物質が、一気に放出されます。このヒスタミンが、神経や血管を刺激し、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといった、つらい症状を引き起こすのです。一度、このアレルギー反応の連鎖が本格的に始まってしまうと、粘膜は非常に過敏な状態になり、わずかな花粉にも、過剰に反応するようになってしまいます。こうなると、薬を飲んでも、なかなか症状を抑えるのが難しくなります。初期療法は、この本格的なアレルギー反応が起こる前に、先手を打って、マスト細胞がヒスタミンを放出しにくいように、安定させておく治療法です。主に、第二世代の「抗ヒスタミン薬」の内服薬が用いられます。この薬を、花粉の飛散開始予測日の約2週間前から、あるいは、症状がごく軽いうちから、毎日服用し続けることで、シーズン中の症状の発現を遅らせ、症状そのものを軽くし、そして薬の使用量を減らす効果が期待できるのです。毎年つらい症状に悩まされている人は、天気予報などで花粉の飛散情報をチェックし、「そろそろ飛び始めるな」と感じたら、早めに、かかりつけの耳鼻咽喉科やアレルギー科を受診し、初期療法について相談することをお勧めします。この「先手を打つ」という発想の転換が、あなたをつらい花粉症シーズンから救う、最も賢明な戦略と言えるでしょう。
-
花粉症予防は外出時の対策から
春の訪れは多くの人にとって喜ばしいものですが、花粉症に悩む人々にとっては、つらい季節の始まりを意味します。目のかゆみ、くしゃみ、鼻水といった不快な症状を少しでも和らげるためには、原因となる花粉を、いかに体内に取り込まないかという予防策が最も重要になります。その基本となるのが、外出時の対策です。まず、最も効果的で手軽な予防法が、マスクの着用です。顔にフィットする適切なサイズのマスクを選ぶことで、吸い込む花粉の量を大幅に減らすことができます。不織布製のマスクは、花粉を物理的にブロックする効果が高く、顔とマスクの間に隙間ができないように、鼻のワイヤーをしっかりと合わせ、顎の下まで覆うことがポイントです。また、目のかゆみに悩む人にとっては、メガネやゴーグルの着用が欠かせません。普通のメガネでも、裸眼の状態に比べて、目に入る花粉の量を半分近くまで減らすことができるとされています。さらに、フレームが顔に沿うようにデザインされた、花粉症対策専用のメガネやゴーグルを使用すれば、その効果はさらに高まります。服装にも、少しの工夫が必要です。ウールなどの毛羽立った素材の衣類は、花粉が付着しやすいため、避けるのが賢明です。表面がツルツルとした、綿やポリエステル、ナイロンといった素材の上着を選ぶと、家に入る前に手で払うだけで、多くの花粉を落とすことができます。帽子をかぶることも、髪の毛への花粉の付着を防ぐ上で非常に有効です。これらの基本的な対策を、外出する際には必ず実践する。この地道な積み重ねが、つらい症状をコントロールするための、最も確実な第一歩となるのです。
-
顔やまぶたのむくみ、尿の異常があれば「腎臓内科」
朝起きた時に、顔、特に「まぶた」がパンパンに腫れぼったく、むくんでいる。そして、足のむくみもひどく、尿の量が減った、あるいは、尿が異常に泡立つ(蛋白尿)といった症状に気づいたら、それは、血液を濾過して老廃物を排出するフィルターである「腎臓」の機能に、何らかの異常が生じているサインかもしれません。このような症状が見られる場合に、受診すべき専門診療科は「腎臓内科」です。腎臓の主な働きの一つは、体内の水分と塩分(ナトリウム)のバランスを、尿の量を調節することによって、一定に保つことです。しかし、腎臓の機能が低下すると、余分な塩分と水分を、十分に体外へ排出することができなくなり、体内に溜め込んでしまいます。これが、腎臓病によるむくみの基本的なメカニズムです。また、腎臓病の中には、「ネフローゼ症候群」と呼ばれる、腎臓のフィルター機能を持つ「糸球体」という部分に穴が空いてしまい、血液中の大切なタンパク質(特にアルブミン)が、大量に尿中へ漏れ出てしまう病態があります。血液中のアルブミンは、血管内に水分を保持する「膠質浸透圧」という力を生み出しています。このアルブミンが減少すると、血管内の水分が、外の組織へ漏れ出しやすくなり、全身に非常に強いむくみを引き起こします。腎臓病によるむくみの特徴は、心不全と同様に「圧痕性浮腫」であり、比較的、柔らかい組織である、顔やまぶたに、症状が顕著に現れやすいことです。腎臓内科では、まず「尿検査」と「血液検査」を詳細に行います。尿検査では、蛋白尿や血尿の有無とその程度を、血液検査では、腎機能の指標である「血清クレアチニン」や「BUN(尿素窒素)」の値、そして「血清アルブミン」の値を測定します。これらの結果から、腎臓のどの部分に、どのような問題が起きているのかを推測します。原因をさらに詳しく調べるためには、超音波検査やCT検査、そして確定診断のために、腎臓の組織の一部を針で採取して調べる「腎生検」という精密検査が行われることもあります。腎臓病は、「沈黙の臓器」とも言われ、自覚症状が出た時には、すでに病状がかなり進行していることも少なくありません。むくみと尿の異常は、腎臓が発する数少ないSOSサインです。見逃さずに、専門医の診察を受けてください。
-
甲状腺機能低下症や栄養失調によるむくみ
これまで述べてきた、心臓、腎臓、肝臓といった主要な臓器に明らかな異常がないにもかかわらず、全身がむくみ、特に顔や手足が腫れぼったい。そして、そのむくみは、指で押しても、あまり跡が残らない(非圧痕性浮腫)のが特徴である。このような場合、甲状腺ホルモンの異常や、栄養状態の問題が、むくみの原因となっている可能性があります。まず、考えられるのが「甲状腺機能低下症」です。これは、首の前側にある甲状腺という臓器から分泌される、体の新陳代謝を活発にする「甲状腺ホルモン」の量が、不足してしまう病気です。甲状腺ホルモンが不足すると、全身の代謝が低下し、皮膚の組織に、ムコ多糖類という、水分を多く引き寄せる物質が過剰に蓄積します。これが、甲状腺機能低下症に特徴的な、硬くて、押してもへこみにくい「粘液水腫(ねんえきすいしゅ)」と呼ばれるむくみの正体です。このむくみは、顔やまぶた、手足だけでなく、舌や喉の粘膜にも起こることがあり、声がかすれたり、ろれつが回りにくくなったりすることもあります。むくみ以外にも、「全身の倦怠感」「異常な寒がり」「体重増加」「便秘」「脱毛」「皮膚の乾燥」といった、全身の代謝低下を示す、多彩な症状を伴うのが特徴です。この病気の診断と治療は、「内分泌内科」または「一般内科」が専門となります。血液検査で、甲状腺ホルモンと、甲状腺を刺激するホルモン(TSH)の値を測定すれば、簡単に診断がつきます。治療は、不足している甲状腺ホルモンを、薬(レボチロキシン)として、毎日服用することで補います。次に、「栄養失調」によるむくみも、特に高齢者や、極端なダイエットをしている人に見られます。これは、食事からのタンパク質の摂取が不足し、血液中の「アルブミン」の濃度が低下することで起こるもので、肝臓病によるむくみと同じメカニズムです(低栄養性浮腫)。この場合は、適切な栄養管理と、原因となっている基礎疾患の治療が重要となり、これも主に内科医が担当します。
-
自分でできる花粉症の予防と対策
花粉症の季節を乗り切るためには、医療機関で処方される薬に頼るだけでなく、日常生活の中で、自分自身でできるセルフケアを積極的に取り入れることが、症状のコントロールに大きく役立ちます。薬物療法とセルフケアは、花粉症対策の両輪であり、両方を実践することで、より高い効果が期待できます。まず、外出から帰ってきた際に、ぜひ習慣にしてほしいのが「鼻うがい」です。鼻の中に入り込んで、粘膜に付着してしまった花粉や、ハウスダストなどのアレルゲンを、物理的に洗い流すことができる、非常に効果的なセルフケアです。体液に近い濃度の、温かい食塩水(0.9%程度の生理食塩水)を使えば、ツーンとした痛みもなく、快適に行えます。専用の洗浄器具も市販されています。鼻うがいは、鼻粘膜の炎症を鎮め、鼻づまりを改善する効果も期待できます。同様に、目のかゆみがつらい場合は、「目の洗浄」も有効です。ただし、水道水で直接目を洗うのは、涙の成分まで洗い流してしまい、かえって角膜を傷つける可能性があるため、避けるべきです。防腐剤の入っていない、人工涙液タイプの目薬を、少し多めに点眼して、目の中の花粉を洗い流すようにするのが、目に優しい方法です。また、花粉症というアレルギー疾患と上手く付き合っていく上で、土台となるのが「生活習慣の見直し」です。免疫システムが正常に機能するためには、十分な睡眠と、栄養バランスの取れた食事が不可欠です。睡眠不足や、不規則な食生活は、自律神経のバランスを乱し、アレルギー症状を悪化させる原因となります。特に、睡眠中は、体を修復し、免疫機能を整えるための重要な時間です。寝室に空気清浄機を置くなどして、快適な睡眠環境を整えましょう。さらに、「ストレス管理」も、意外と見過ごされがちな、重要なポイントです。過度なストレスは、免疫のバランスを崩し、花粉症の症状を悪化させることが知られています。自分なりのリラックス方法を見つけ、心身ともに、ゆとりのある生活を心がけることが、アレルギーに負けない体質作りへと繋がっていきます。これらの地道なセルフケアの積み重ねが、つらい季節を乗り切るための、確かな力となるのです。
-
私の花粉症予防奮闘記
私が、自分の花粉症を初めて自覚したのは、大学の卒業を間近に控えた、春のことでした。それまでは、春といえば、心躍る季節でしかなかったのに、その年は、原因不明のくしゃみと、滝のように流れる鼻水、そして、目玉を取り出して洗いたくなるほどの、猛烈なかゆみに、毎日悩まされることになったのです。社会人になってからも、その症状は年々ひどくなる一方で、春の訪れは、私にとって「憂鬱」の代名詞となりました。仕事に集中できず、ティッシュペーパーの箱が、手放せない日々。毎年のように、耳鼻咽喉科で処方される抗ヒスタミン薬を飲むのですが、眠気の副作用で、日中は頭がボーっとしてしまう。そんな対症療法に、限界を感じ始めていました。「何とかして、この状況を変えたい」。そう決意した私は、まず、徹底的なセルフケアから始めることにしました。外出時は、高性能なマスクと、花粉症用のゴーグルを装着。帰宅すれば、玄関前で全身の花粉を払い落とし、すぐにシャワーを浴びる。洗濯物は、絶対に外には干さない。空気清浄機は、24時間フル稼働させました。さらに、食生活も見直しました。腸内環境を整えるという話を聞き、毎朝のヨーグルトを習慣にし、青魚を積極的に食べるようにしました。これらの対策で、症状は、以前よりは少し楽になったような気はしましたが、それでも、薬を手放せるほどではありませんでした。そんな時、かかりつけの医師から提案されたのが、「舌下免疫療法」でした。3年以上、毎日、薬を舌の下で溶かす必要があると聞き、最初は少し躊躇しましたが、「根本から治る可能性がある」という言葉に、私は最後の望みを託すことにしたのです。治療を始めて1年目の春、まだ薬は必要でしたが、症状が明らかに軽いことに気づきました。そして、2年目の春。驚いたことに、私は、ほとんど薬を飲むことなく、シーズンを乗り切ることができたのです。あんなに私を苦しめた、目のかゆみも、くしゃみも、嘘のようです。長年の奮闘の末に、私はようやく、春という季節の、本来の美しさを取り戻すことができました。