毎年繰り返される、つらい花粉症の症状。マスクやメガネ、そして薬で、その場をしのぐ「対症療法」も重要ですが、「できることなら、このアレルギー体質そのものを、根本から改善したい」と願う人も少なくないでしょう。そんな願いに応えるための治療法として、近年、注目を集めているのが「アレルゲン免疫療法」です。これは、花粉症の原因となっているアレルゲン(スギ花粉など)を、ごく少量から、体に投与し、徐々にその量を増やしていくことで、体をアレルゲンに「慣れ」させ、アレルギー反応そのものを起こしにくくしていく、唯一の根本的な治療法とされています。アレルゲン免疫療法には、現在、主に二つの方法があります。一つは、従来から行われている「皮下免疫療法」です。これは、アレルゲンを含むエキスを、腕の皮下に注射する方法です。治療は、最初は少量・低濃度から始め、徐々に量を増やしていき、維持量に達したら、その後は月に1回程度のペースで、通院して注射を続けます。もう一つが、近年、急速に普及している「舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)」です。これは、アレルゲンを含む治療薬(錠剤または液体)を、毎日、舌の下に1~2分間保持してから、飲み込むという方法です。注射の痛みがなく、自宅で治療を続けられるという手軽さから、多くの患者さんに選ばれるようになっています。現在、日本では、スギ花粉症と、ダニアレルギー性鼻炎に対して、この舌下免疫療法が保険適用となっています。この治療法の最大のメリットは、長期にわたって正しく治療を続けることで、花粉症の症状を、大幅に軽減、あるいは完全に治癒させることが期待できる点です。治療を終了した後も、その効果が長期間持続するとされています。また、将来的に、他のアレルギー疾患を発症するのを予防する効果も報告されています。ただし、この治療法には、いくつかの注意点もあります。まず、治療期間が、3年から5年と、非常に長いことです。根気強く、毎日治療を続ける必要があります。また、治療の開始時期も重要で、スギ花粉症の場合は、花粉が飛んでいない時期(6月~12月頃)から治療を開始しなければなりません。副作用として、口の中のかゆみや腫れ、喉の違和感などが現れることもあります。アレルゲン免疫療法は、花粉症を根本から克服したいと考える人にとっては、大きな希望となる治療法と言えるでしょう。
花粉症を根本から治す予防的治療