夏になると、子どもたちの間で決まって流行する感染症、手足口病。その名の通り、手のひら、足の裏、そして口の中に、特徴的な水ぶくれ(水疱)や発疹が現れる病気です。突然の発熱と共に、痛々しい発疹が全身に広がる様子を見て、多くの保護者の方は、「すぐに病院へ連れて行くべきだけど、一体何科に行けばいいの?」と迷ってしまうことでしょう。特に、皮膚の発疹と口の中の痛みという、複数の領域にまたがる症状が現れるため、その悩みはもっともです。結論から言うと、手足口病の診断と治療において、最も中心的な役割を担う診療科は、子どもの病気の専門家である「小児科」です。手足口病は、主にコクサッキーウイルスやエンテロウイルスといったウイルスによって引き起こされる感染症であり、その患者のほとんどが乳幼児です。小児科医は、手足口病の典型的な症状や経過を熟知しており、似たような症状を示す他の子ども特有の感染症(ヘルパンギーナ、溶連菌感染症、水疱瘡など)との鑑別を、的確に行うことができます。また、子どもの全身状態を評価し、最も注意すべき合併症である脱水症状や、稀な重症例の兆候を早期に見抜くことができます。一方で、大人が感染した場合や、子どもの皮膚症状が特にひどい、あるいは診断がはっきりしない場合には、他の診療科が関わることもあります。例えば、大人の場合は、かかりつけの「内科」が最初の窓口となります。また、皮膚の発疹の診断に特化している「皮膚科」や、口内炎の痛みが極めて強い場合には「耳鼻咽喉科」も選択肢となり得ます。この記事シリーズでは、これらの診療科それぞれの役割と特徴を詳しく解説し、あなたが、あるいはあなたのお子さんが、最適な医療を受けるための手助けをします。