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子供の無呼吸症候群特有の症状とは
「睡眠時無呼吸症候群」というと、いびきをかく、太った中年男性の病気、というイメージが強いかもしれません。しかし、この病気は、大人だけでなく、子供たち、特に三歳から七歳くらいの幼児期から学童期の子供たちの間でも、決して珍しいものではありません。そして、子供の無呼吸症候群は、大人の症状とは異なる、見過ごされがちな、特有のサインとして現れることが多く、その発見が遅れると、子供の健やかな成長や発達に、深刻な影響を及ぼす可能性があるため、保護者の注意深い観察が、何よりも重要となります。大人の無呼吸症候群の主な症状が「日中の眠気」であるのに対し、子供の場合は、逆に「多動・衝動性・攻撃性」といった、まるでADHD(注意欠陥・多動性障害)のような行動上の問題として現れることが、大きな特徴です。夜間に、無呼吸による低酸素状態で、質の良い深い睡眠が取れないため、日中に脳が十分に休息できず、その結果、集中力が続かなかったり、落ち着きがなくなったり、些細なことでかんしゃくを起こしやすくなったりするのです。「うちの子は、ただ落ち着きがないだけ」と思っていたその行動が、実は、夜間の呼吸の苦しさから来る、SOSサインである可能性も考えられます。また、「夜尿(おねしょ)」が、年齢の割にいつまでも続く場合も、注意が必要です。無呼吸状態になると、尿の量を調節するホルモンの分泌が乱れるため、夜尿の原因となることがあります。その他にも、睡眠中の特徴的なサインとして、大人と同様の「大きないびき」や、「呼吸の停止」、そして「陥没呼吸」という、息を吸う時に、胸や鎖骨のあたりが、不自然にペコペコとへこむ呼吸が見られることもあります。さらに、長期的な影響として、慢性的な酸素不足が、成長ホルモンの分泌を妨げ、同年代の子供と比べて「低身長」や「体重増加不良」といった、発育の遅れに繋がることもあります。子供の無呼吸症候群の最も一般的な原因は、「アデノイド」や「扁桃(へんとう)」の肥大です。これらの喉の奥にあるリンパ組織が、生まれつき大きいことで、空気の通り道を物理的に塞いでしまうのです。もし、お子様にこれらの症状が見られる場合は、迷わず、「小児科」あるいは「耳鼻咽喉科」を受診してください。早期に発見し、適切な治療を行うことが、お子様の健やかな未来を守るための、最高のプレゼントとなるのです。
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息苦しい時は救急車?コロナ重症化のサイン
新型コロナウイルス感染症は、その多くが軽症または中等症で回復に向かいますが、一部のケースでは、急速に症状が悪化し、命に関わる深刻な肺炎へと進行することがあります。その運命の分かれ目となる、重症化の兆候、すなわち「危険なサイン」を、あなた自身と、あなたの家族が見逃さないことが、何よりも重要です。これから挙げるような症状が見られた場合は、もはや「何科に行こうか」と迷っている時間はありません。それは、一刻も早い医療介入が必要な、緊急事態宣言です。迷わず、すぐに救急車の要請を検討してください。まず、最も警戒すべき、そして最も分かりやすい危険なサインが、「息苦しさ(呼吸困難)」の出現と、その悪化です。具体的には、「少し動いただけでも、肩で息をするほど息が切れる」「安静にしていても、呼吸が速く、浅い」「胸に圧迫感や痛みがあり、深く息を吸い込むことができない」といった症状です。また、客観的な指標として、「パルスオキシメーター」で測定した、血中酸素飽和度(SpO2)の値が「九十三パーセント以下」になった場合も、呼吸状態が悪化している明確な証拠です。次に、脳への酸素供給が不足していることを示す、中枢神経系の症状にも、注意が必要です。「呼びかけに対する反応が鈍い、意識が朦朧としている」「唇や、顔色、爪の色が、紫色や青白くなっている(チアノーゼ)」といった症状は、極めて危険な状態であることを示唆します。また、高齢者の場合は、典型的な呼吸器症状が現れにくく、代わりに「ぐったりとして元気がない」「食事や水分が全く摂れない」「失禁してしまう」といった、全身状態の急激な悪化として、重症化のサインが現れることもあります。これらの危険なサインは、自宅療養中に、患者さん本人だけでなく、同居する家族が、注意深く観察することが重要です。特に、高齢者や、糖尿病、心臓病、慢性呼吸器疾患といった基礎疾患のある方、肥満の方、そして喫煙者の方は、重症化のリスクが高いとされています。もし、これらのサインが一つでも見られた場合は、「もう少し様子を見よう」という判断は、命取りになりかねません。躊躇なく、救急相談窓口(#7119)に電話するか、あるいは直接、一一九番に通報し、専門家の指示を仰いでください。
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私がコロナに感染し発熱外来を受診した話
全ての始まりは、月曜日の朝に感じた、喉の奥の、ほんの些細なイガイガ感でした。その時は、週末の疲れが出たのだろうと、軽く考えていました。しかし、その日の午後、オフィスで仕事をしていると、体の芯から、ゾクゾクとした悪寒が走り始め、関節の節々が、まるで軋むように痛み出したのです。体温を測ると、三十八度二分。これは、ただの風邪ではない。そう直感した私は、早退させてもらい、自宅で抗原検査キットを試しました。結果は、くっきりと浮かび上がった、二本の線。「陽性」でした。頭が真っ白になりました。ついに、自分も感染してしまったのか。これから、どうすればいいのだろう。幸い、私には、近所にかかりつけの内科クリニックがありました。すぐに電話をかけ、陽性であったことと、症状を伝えると、受付の方は、非常に落ち着いた声で、「午後の発熱外来の時間に、来てください。到着したら、中には入らず、クリニックの裏手にある駐車場から、もう一度お電話ください」と、具体的な指示をくれました。その言葉に、私は少しだけ、冷静さを取り戻すことができました。指定された時間、車でクリニックの駐車場に着き、電話をかけると、数分後、完全防備の看護師さんが出てきて、車に乗ったまま、鼻の奥に、あの痛い検査(PCR検査)をしてくれました。そして、医師とは、車の中から、スマートフォンのビデオ通話で診察が行われました。「症状は、今のところ軽症ですね。解熱剤と咳止めを出しておきますから、自宅で安静にして、何か異変があったら、すぐに連絡してください」。その、画面越しの、穏やかで、しかし力強い言葉に、私は心から安堵しました。薬局も、ドライブスルー形式で、車から降りずに薬を受け取ることができました。それからの数日間、私は高熱と、ガラスの破片を飲み込むような喉の痛みに苦しみました。しかし、あの時、最初にパニックにならず、かかりつけ医に電話をし、整備された発熱外来のシステムの中で、スムーズに診察と治療へと繋がれたことが、自宅療養中の、大きな心の支えとなりました。医療従事者の方々が、自らの感染リスクと戦いながら、私たちのために、このような体制を築いてくれている。その事実への感謝の念を、私は決して忘れることはないでしょう。