元気いっぱいに見える我が子の手が、ふとした瞬間に震えていることに気づくと、親としては非常に心配になるものです。「何か大変な病気なのでは?」と不安がよぎるかもしれませんが、子供の震えには様々な原因があり、その多くは一時的なものであったり、心配のいらない生理的な反応であったりします。しかし、中には注意深く経過を観察し、専門医への相談が必要なケースもあります。まず、子供の手の震えで最もよく見られるのは「生理的振戦」です。これは病気ではなく、緊張や興奮、不安、恐怖といった強い感情の高ぶりによって、誰にでも起こりうる自然な身体反応です。例えば、発表会や試験の前、友達と喧嘩した後などに手が震えるのは、このケースが多いでしょう。また、寒い時に体がブルブルと震えるのも同じ原理です。このような震えは、原因となる状況がなくなれば自然に収まるため、過度に心配する必要はありません。また、発熱時に体がガタガタと震えることがありますが、これも体温を上げようとする体の正常な働き(悪寒戦慄)であり、病的な震えとは異なります。しかし、注意が必要な震えもあります。一つは「本態性振戦」です。これは特定の病気が原因ではなく、主に姿勢を保とうとした時や動作時に現れる震えで、遺伝的な要因が関与することもあります。コップで水を飲もうとしたり、字を書こうとしたりする時に震えが目立ち、学童期以降に気づかれることが多いです。日常生活に支障が出るほどであれば、治療の対象となります。また、頻度は低いですが、甲状腺機能亢進症や低血糖、電解質異常といった内科的な病気が原因で震えが起きている可能性もあります。震え以外に、多汗、体重減少、異常な食欲、元気がない、といった全身症状が見られる場合は、小児科を受診して検査を受ける必要があります。さらに、てんかん発作の一部として、手足がリズミカルに震える(けいれんする)こともあります。意識の状態がおかしかったり、体の動きが左右非対称であったりする場合は、すぐに医療機関に相談してください。親としてできることは、まず慌てずに子供の様子をよく観察することです。いつ、どんな時に、どのくらいの時間震えるのか。震え以外の症状はないか。これらの情報を記録し、小児科を受診する際に医師に具体的に伝えることが、的確な診断への第一歩となります。