大人が、高熱と強い喉の痛みで医療機関を受診した時、その原因は、必ずしも溶連菌感染症であるとは限りません。似たような症状を引き起こす、他の様々な病気の可能性を、常に念頭に置いておく必要があります。正しい治療法は、原因によって全く異なるため、鑑別診断が非常に重要となります。まず、最も頻度が高く、鑑別が必要なのが、「ウイルス性の急性咽頭炎・扁桃炎」です。その代表格が「アデノウイルス感染症」です。アデノウイルスは、「プール熱(咽頭結膜熱)」の原因としても知られ、溶連菌と同じように、高熱と、扁桃腺に白い膿が付着するほどの、強い喉の痛みを引き起こします。溶連菌との大きな違いは、アデノウイルスが原因の場合は、抗生物質が全く効かないという点です。また、目の充血(結膜炎)を伴うことが多いのも、鑑別の手がかりとなります。「伝染性単核球症」も、若い大人に見られる、鑑別すべき重要な病気です。EBウイルスという、ヘルペスウイルスの仲間に初感染することで発症し、高熱、強い喉の痛み、そして首のリンパ節の著しい腫れが、1~2週間以上と、比較的長く続くのが特徴です。血液検査で、異型リンパ球の増加が見られることで診断されます。この病気で、ペニシリン系の抗生物質を誤って使用すると、高率に薬疹(薬によるアレルギー性の発疹)が出現することも知られています。また、喉の痛みが片側に非常に強い場合は、「扁桃周囲膿瘍」の可能性も考えなければなりません。これは、扁桃炎の炎症が、扁桃腺の周囲の組織にまで波及し、膿の塊を作ってしまう状態で、口が開きにくくなったり、声がこもったりするのが特徴です。この場合は、抗生物質の点滴に加えて、切開して膿を出す処置が必要となるため、耳鼻咽喉科での専門的な対応が不可欠です。その他、もちろん「インフルエンザ」や「新型コロナウイルス感染症」でも、高熱と共に、強い喉の痛みが現れることがあります。これらのウイルス感染症は、迅速検査キットで鑑別が可能です。このように、喉の痛み一つとっても、その原因は様々です。だからこそ、迅速診断キットも含めた、医師による正確な診断が、適切な治療への第一歩となるのです。