花粉症の季節になると、ドラッグストアには多種多様な市販薬がずらりと並びます。手軽に購入できる市販薬は非常に便利ですが、一方で「病院で処方される薬とは何が違うのだろう?」「どちらを選べばいいのかわからない」と悩む方も多いでしょう。市販薬と処方薬、それぞれの特徴を理解し、自分の症状やライフスタイルに合わせて賢く使い分けることが、つらい季節を乗り切るカギとなります。まず、最も大きな違いは「成分の種類と強さ」です。市販薬は、安全性を最優先に考え、比較的副作用が少なく、多くの人に使える成分が選ばれています。一方、処方薬は、医師の診断のもとで患者さん一人ひとりの症状の重さや体質に合わせて処方されるため、より効果の高い成分や、新しい世代の抗アレルギー薬など、幅広い選択肢の中から最適なものを選ぶことができます。特に、鼻づまりに高い効果を発揮するステロイド点鼻薬や、目の強いかゆみを抑えるステロイド点眼薬、ロイコトリエン拮抗薬といった特定の症状に特化した薬は、医師の処方が必要です。次に、「治療の目的」も異なります。市販薬は、すでに出てしまった症状を一時的に和らげる「対症療法」が主な目的です。一方、医療機関では、症状を抑えるだけでなく、血液検査でアレルギーの原因(アレルゲン)を特定したり、花粉飛散前から薬を飲み始める「初期療法」によってシーズン中の症状を軽くしたり、さらには体質改善を目指す「舌下免疫療法」を提案したりと、より長期的・根本的な視点での治療が可能です。そして、忘れてはならないのが「コスト」です。一見、市販薬の方が安価に思えるかもしれませんが、症状が重く、複数の市販薬を長期間使い続ける場合、結果的に医療機関で健康保険を使って処方してもらう方が自己負担額は安く済むケースも少なくありません。では、どう使い分けるべきでしょうか。症状が軽く、年に数日程度しか気にならない方や、急な症状にすぐ対処したい場合は、市販薬が便利です。しかし、市販薬を一週間以上使っても症状が改善しない、眠気などの副作用が気になる、夜も眠れないほど症状が重い、どの花粉が原因か知りたい、といった場合は、迷わず専門の医療機関(耳鼻咽喉科、眼科、アレルギー科など)を受診することをお勧めします。専門医による的確な診断と処方が、つらい花粉症からの最短の出口となるでしょう。
市販薬と処方薬どう違う?花粉症の薬、賢い選び方