女性の人生において、閉経は生殖の役割を終え、新しい活動期へ入る大きな転換点です。通常、生理が一年以上途絶えた状態をもって閉経と定義されますが、その後の平穏な日々に突如として現れる不正出血は、決して「若返りの兆候」などではなく、身体からの最大級の警告であると認識しなければなりません。医学的な統計において、閉経後の不正出血の約一割から二割に、子宮体がん(子宮内膜がん)が発見されるという事実があります。子宮体がんは、閉経後にエストロゲンの刺激が低下する中で、何らかの理由で内膜が異常増殖することで発生します。この病気の最大の特徴は、比較的早い段階で不正出血としてサインが現れる点にあります。つまり、出血があったその瞬間に「おかしい」と気づき、即座に受診すれば、完治を目指せる段階で発見できる確率が非常に高いのです。しかし、悲しいことに、多くの女性が「もう生理はないはずなのに、少し汚れただけだから」「痔のせいだろう」「更年期の名残かもしれない」と自己判断を下し、貴重な数ヶ月を浪費してしまいます。閉経後の子宮や膣は、ホルモンの減少により粘膜が薄く脆くなる「閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)」の状態にあります。これによって生じる萎縮性膣炎も出血の原因となりますが、これ自体は深刻な病気ではないものの、出血の正体が炎症なのか癌なのかを自分自身で見分けることは不可能です。診察では、医師はまず内膜の厚さをエコーで測定します。通常、閉経後の内膜は非常に薄くなっていますが、ここで異常な厚みが認められれば、細胞を採取する精査へと進みます。この迅速なスクリーニングこそが、命を繋ぐ防波堤となります。かつての世代では、婦人科疾患を「恥ずかしいもの」として隠す風潮がありましたが、現代を生きる私たちは、医学的な知識という盾を持って、自分の人生の後半戦を守り抜く責任があります。不正出血という、一見不吉に見える現象も、早期発見のための「神様からのギフト」と捉える強さが必要です。また、高血圧や糖尿病、肥満などの基礎疾患がある方は、子宮体がんのリスクがより高いことが知られており、一層の警戒が求められます。自分の身体の変化に敏感であり続けること、そして「以前とは違う自分」を認めて専門家の門を叩くこと。その一歩が、健やかで輝かしいシニアライフを継続するための、最も重要な決断となるのです。あなたの命を守れるのは、知識に基づいたあなたの行動だけなのです。
閉経後の不正出血を絶対に見過ごしてはいけない医学的理由。