患者と家族のための医療サポート情報集

2025年9月
  • 専門は「内分泌内科」、まず相談すべき理由

    医療

    甲状腺の病気の診療において、最も専門性が高い診療科が「内分泌内科」または「代謝・内分泌内科」です。なぜなら、甲状腺は、ホルモンを産生し、血液中に分泌する「内分泌器官」の代表格であり、その機能異常は、まさに内分泌学の専門領域だからです。内分泌内科医は、甲状腺ホルモンの複雑な分泌調節のメカニズムや、それが全身に及ぼす影響、そして、多彩な治療薬の特性や副作用について、深い知識と豊富な臨床経験を持っています。甲状腺の病気には、甲状腺ホルモンが過剰になる「甲状腺機能亢進症(代表例:バセドウ病)」と、逆にホルモンが不足する「甲状腺機能低下症(代表例:橋本病)」という、正反対の状態があります。バセドウ病では、動悸、多汗、体重減少、手の震え、イライラ、眼球突出といった、全身の代謝が異常に活発になる症状が現れます。一方、橋本病では、無気力、倦怠感、むくみ、寒がり、体重増加、便秘といった、代謝が低下する症状が見られます。これらの症状は、非常に多岐にわたり、心臓の病気や、精神的な不調(うつ病や不安障害)、あるいは更年期障害などと、間違われやすいという特徴があります。内分泌内科医は、これらの多彩な症状の中から、甲状腺疾患に特徴的なサインを的確に見出し、鑑別診断を進めることができます。診断のためには、まず「血液検査」で、血液中の甲状腺ホルモン(FT3, FT4)と、脳の下垂体から分泌され、甲状腺をコントロールしている「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」の値を測定します。この3つのホルモンのバランスを見ることで、甲状腺の機能が亢進しているのか、低下しているのかを、正確に判断できます。また、バセドウ病や橋本病は、免疫の異常が原因で起こる「自己免疫疾患」であるため、原因となる自己抗体(TRAb, TPO抗体, Tg抗体など)を測定することも、診断の確定に役立ちます。治療は、バセドウ病であれば、甲状腺ホルモンの産生を抑える薬(抗甲状腺薬)が、橋本病であれば、不足している甲状腺ホルモンを補う薬(レボチロキシン)が、それぞれ用いられます。これらの薬は、効果を見ながら、ミリグラム単位で、きめ細かく量を調整していく必要があり、まさに内分泌内科医の腕の見せ所と言えるでしょう。

  • 「不機嫌病」への対処法、病院で相談できること

    知識

    突発性発疹の経過の中で、多くの保護者が、高熱そのものよりも、心身ともに疲弊してしまうのが、熱が下がって発疹が出る頃に始まる、赤ちゃんの激しい「不機嫌」です。何をしても泣きやまない、一日中ぐずり続ける、親にべったりで片時も離れない。この「不機嫌病」とも呼ばれる状態は、多くの赤ちゃんに見られる、突発性発疹の、ある意味で特徴的な症状の一つです。原因は、はっきりとは解明されていませんが、数日間の高熱で体力を消耗した後の、全身の倦怠感や不快感が、主な理由と考えられています。言葉でつらさを表現できない赤ちゃんが、「泣く」「ぐずる」という形で、SOSを発信しているのです。この時期、保護者の方は、「どうしてこんなに泣き続けるのだろう」「何か悪い病気なのではないか」と、不安でいっぱいになり、寝不足も相まって、精神的に追い詰められてしまうことも少なくありません。このような時、病院、特に、かかりつけの小児科医は、病気の治療だけでなく、保護者の不安を受け止め、支えてくれる、心強い味方となります。発疹が出て、再受診した際に、「熱が下がってから、ずっと機嫌が悪くて、本当に大変なんです」と、正直に、そのつらさを相談してみてください。医師は、それが突発性発疹の回復期によく見られる現象であることを、専門的な視点から説明してくれます。「多くの赤ちゃんがそうなるんですよ」「病気が治っていく過程だから、心配いりませんよ」「あと数日の辛抱ですよ」といった、医師からの客観的で、共感的な言葉は、保護者の不安を和らげ、「自分だけではないんだ」という安心感を与えてくれます。また、あまりにも機嫌が悪く、夜も眠れないような場合には、まれではありますが、赤ちゃんの不快感を和らげるための、穏やかな鎮静作用のある薬(抗ヒスタミン薬など)の処方を、検討してくれることもあります。さらに、医師や看護師から、「今は、できるだけ赤ちゃんの要求に応えて、たくさん抱っこしてあげてくださいね」「家事も完璧にやろうとせず、赤ちゃんと一緒に、お昼寝してくださいね」といった、具体的なアドバイスをもらうことで、保護者自身も、「今はこれで良いんだ」と、肩の力を抜くことができます。病院は、病気を治すだけの場所ではありません。育児における不安や悩みを、専門家と共有し、サポートを受けるための、重要な場所でもあるのです。

  • まず相談すべきは「一般内科・総合診療科」

    医療

    ひどいむくみで、どの専門科を受診すればよいか全く見当がつかない。そんな時、最初に扉を叩くべき、最も信頼できる相談窓口が「一般内科」または「総合診療科」です。これらの科の医師は、特定の臓器に専門が偏ることなく、全身を総合的に診るトレーニングを積んでいます。むくみという症状の背後には、心臓、腎臓、肝臓、甲状腺、血管、栄養状態など、実に様々な要因が関わっている可能性があるため、この「総合的な視点」こそが、原因を突き止めるための、最初の、そして最も重要なステップとなるのです。一般内科や総合診療科を受診すると、医師はまず、非常に詳細な「問診」から診察を始めます。いつから、体のどこがむくんでいるのか、むくみ以外の症状(息切れ、体重増加、尿の異常、だるさなど)はないか、過去の病歴や、現在服用中の薬、そして食生活や飲酒歴といった、生活習慣に至るまで、詳しく聞き取ります。この問診が、原因を絞り込むための、極めて重要な手がかりとなります。次に、「身体診察」です。医師は、むくんでいる部分を指で押し、その跡がしばらく残るかどうか(圧痕性浮腫)を確認します。これは、心臓や腎臓、肝臓の病気でよく見られる所見です。また、聴診器で心臓や肺の音を聞き、心不全の兆候がないか、首の静脈が張っていないか、腹水が溜まっていないかなどを、注意深く診察します。そして、診断を確定させるために、いくつかの基本的な「検査」が行われます。まず、「血液検査」では、腎臓の機能を示すクレアチニンやBUN、肝臓の機能を示すASTやALT、そして体内のタンパク質の量(特にアルブミン)などを測定します。また、心臓への負担の度合いを示すBNPや、甲状腺ホルモンの値も、重要な指標となります。「尿検査」では、尿中にタンパク質が漏れ出ていないか(蛋白尿)を調べます。これは、腎臓病の重要なサインです。これらの問診、診察、そして基本的な検査結果を総合的に判断し、医師はむくみの原因をある程度推測します。そして、もし心臓病が強く疑われれば「循環器内科」へ、腎臓病が疑われれば「腎臓内科」へ、といったように、最も適切と考えられる専門科への、スムーズな橋渡し(紹介)をしてくれます。何科に行けばいいか迷ったら、まずは内科の専門家に、診断への道筋をつけてもらう。これが、最も賢明で、安全な選択です。

  • 喉の激痛には専門家、耳鼻咽喉科のメリット

    医療

    高熱や倦怠感もつらいけれど、何よりも「喉の痛みがひどすぎる」「ガラスの破片を飲み込むようで、食事も水分も摂れない」といったように、喉の症状が極めて強く、生活に大きな支障をきたしている場合。そんな時は、喉の専門家である「耳鼻咽喉科」を受診することが、苦痛を和らげるための最善の選択となる可能性があります。耳鼻咽喉科は、耳、鼻、喉(咽頭・喉頭)の病気を専門的に扱う診療科であり、溶連菌感染症の主戦場である扁桃腺の炎症に対し、より詳細な診察と、内科では行えない専門的な処置を提供してくれます。耳鼻咽喉科を受診する最大のメリットは、その「診察の精度」と「専門的処置」にあります。診察では、医師がヘッドライトを装着し、明るい視野のもとで喉の隅々まで詳細に観察します。さらに、必要であれば「ファイバースコープ」という先端にカメラがついた細い管を鼻から挿入し、喉の奥深くや声帯の状態までリアルタイムで評価することが可能です。これにより、炎症が重症化して膿が溜まる「扁桃周囲膿瘍」といった危険な状態に移行していないかを、早期に、かつ正確に診断できます。そして、耳鼻咽痕科ならではの処置が、つらい症状の緩和に大きく貢献します。例えば、多くのクリニックに設置されている「ネブライザー」という吸入器を使い、抗炎症薬や抗生物質を含んだ霧状の薬剤を、口から直接吸入します。これにより、薬剤が痛みの強い患部に直接届き、喉の腫れや痛みを効果的に和らげることが期待できます。また、医師によっては、扁桃腺に付着した膿を専用の器具で吸引除去したり、炎症を抑える薬剤を直接塗布したりする処置を行ってくれることもあります。これらの処置は、内服薬だけでは得られない、即効性のある症状緩和に繋がります。食事も水分も摂れないほどの激しい喉の痛みに苦しんでいる場合は、喉の痛みをコントロールするプロフェッショナルである、耳鼻咽喉科医の力を借りることを強くお勧めします。

  • 健康診断で異常を指摘されたら、まず「内科」へ

    医療

    会社の健康診断や、人間ドックを受けた結果、「甲状腺の異常」を指摘され、不安に感じている方も多いでしょう。「要精密検査」と書かれていても、自覚症状が全くないと、つい受診を先延ばしにしてしまいがちです。しかし、健康診断での指摘は、自覚症状が現れる前の、ごく初期の段階で、病気を発見できる、非常に貴重な機会です。指摘を受けたら、必ず、医療機関を受診するようにしてください。では、健康診断で異常を指摘された場合、何科を受診すればよいのでしょうか。この場合、最もスムーズで、一般的なのが、かかりつけの「一般内科」を受診することです。多くの場合、健康診断の結果票には、「〇〇内科を受診してください」といった、推奨される診療科が記載されています。内科医は、健康診断の各検査項目の意味を正しく理解しており、あなたの結果が、どの程度の異常であり、どのくらいの緊急性で、精密検査が必要なのかを、適切に判断してくれます。健康診断で指摘される甲状腺の異常には、主に二つのパターンがあります。一つは、「血液検査」でのホルモン値の異常です。甲状腺刺激ホルモン(TSH)や、甲状腺ホルモン(FT4など)の値に異常が見つかった場合です。この場合は、甲状腺機能亢進症や、機能低下症の可能性があり、内科で、より詳細なホルモン検査や、原因となる自己抗体の検査を追加で行います。もう一つが、「頸部超音波(エコー)検査」での、形態的な異常の指摘です。「甲状腺腫大」「甲状腺結節」「甲状腺のう胞」といった所見です。この場合は、甲状腺にしこりや、腫れがあることを意味しており、そのしこりが、良性か悪性かを見極めるための、さらなる精密検査が必要となります。かかりつけの内科医は、これらの結果を総合的に判断し、もし、より専門的な評価や治療が必要であると判断すれば、責任を持って、内分泌内科や、耳鼻咽喉科といった、適切な専門医のいる病院へ、紹介状を書いてくれます。健康診断の結果は、あなたの体が発している、小さな、しかし重要なメッセージです。そのメッセージを無視せず、まずは、最も身近な専門家である、内科医に相談することから始めましょう。

  • 溶連菌と間違いやすい他の喉の病気

    知識

    大人が、高熱と強い喉の痛みで医療機関を受診した時、その原因は、必ずしも溶連菌感染症であるとは限りません。似たような症状を引き起こす、他の様々な病気の可能性を、常に念頭に置いておく必要があります。正しい治療法は、原因によって全く異なるため、鑑別診断が非常に重要となります。まず、最も頻度が高く、鑑別が必要なのが、「ウイルス性の急性咽頭炎・扁桃炎」です。その代表格が「アデノウイルス感染症」です。アデノウイルスは、「プール熱(咽頭結膜熱)」の原因としても知られ、溶連菌と同じように、高熱と、扁桃腺に白い膿が付着するほどの、強い喉の痛みを引き起こします。溶連菌との大きな違いは、アデノウイルスが原因の場合は、抗生物質が全く効かないという点です。また、目の充血(結膜炎)を伴うことが多いのも、鑑別の手がかりとなります。「伝染性単核球症」も、若い大人に見られる、鑑別すべき重要な病気です。EBウイルスという、ヘルペスウイルスの仲間に初感染することで発症し、高熱、強い喉の痛み、そして首のリンパ節の著しい腫れが、1~2週間以上と、比較的長く続くのが特徴です。血液検査で、異型リンパ球の増加が見られることで診断されます。この病気で、ペニシリン系の抗生物質を誤って使用すると、高率に薬疹(薬によるアレルギー性の発疹)が出現することも知られています。また、喉の痛みが片側に非常に強い場合は、「扁桃周囲膿瘍」の可能性も考えなければなりません。これは、扁桃炎の炎症が、扁桃腺の周囲の組織にまで波及し、膿の塊を作ってしまう状態で、口が開きにくくなったり、声がこもったりするのが特徴です。この場合は、抗生物質の点滴に加えて、切開して膿を出す処置が必要となるため、耳鼻咽喉科での専門的な対応が不可欠です。その他、もちろん「インフルエンザ」や「新型コロナウイルス感染症」でも、高熱と共に、強い喉の痛みが現れることがあります。これらのウイルス感染症は、迅速検査キットで鑑別が可能です。このように、喉の痛み一つとっても、その原因は様々です。だからこそ、迅速診断キットも含めた、医師による正確な診断が、適切な治療への第一歩となるのです。

  • 家庭内感染を防ぐために大人ができること

    生活

    一度、溶連菌感染症のつらい症状を経験すると、「もう二度とかかりたくない」と、心から思うことでしょう。また、自分が感染源となって、子どもやパートナーにうつしてしまうことも避けたいものです。溶連菌の再発予防と、家庭内での感染拡大を防ぐためには、その感染経路を理解し、日々の生活の中で、適切な対策を講じることが重要です。まず、溶連菌は、一度かかっても、免疫が十分につかないため、何度も「再感染」する可能性がある、ということを知っておく必要があります。特に、溶連菌には多くの血清型(タイプ)が存在するため、異なるタイプの菌に、繰り返し感染することがあるのです。再発を防ぐための、最も基本的な対策は、一般的な風邪の予防と同じく、「免疫力を高く保つ」ことです。日頃から、十分な睡眠と、バランスの取れた食事を心がけ、過労やストレスを溜め込まないようにすることが、細菌に対する抵抗力を維持する上で、何よりも大切です。次に、家庭内での感染対策です。溶連菌の主な感染経路は、咳やくしゃみのしぶきに含まれる菌を吸い込む「飛沫感染」と、菌が付着した手で、口や鼻に触れることによる「接触感染」です。家族の誰かが発症した場合、これらの経路を断つことが、感染拡大防止の鍵となります。感染者は、症状がある間、特に咳が出る場合は、できるだけ「マスクを着用」しましょう。そして、家族全員が、石鹸と流水による「手洗い」を、徹底することが非常に重要です。特に、食事の前や、トイレの後、そして感染者の看病をした後は、必ず手を洗う習慣をつけましょう。アルコール消毒も、補助的に有効です。また、「タオルの共用」は、接触感染の大きなリスクとなります。洗面所や浴室のタオルは、個人別に分け、こまめに洗濯するようにしてください。感染者が使ったコップや箸、食器なども、共有は避け、使用後はすぐに洗浄しましょう。キスや、食べ物の口移しなども、当然ながら感染の原因となります。特に、小さな子どもがいる家庭では、親が感染源となって、子どもにうつしてしまうケースも少なくありません。大人が、喉の痛みや発熱といった、溶連菌を疑う症状を感じた場合は、安易に自己判断せず、早期に医療機関を受診し、診断を確定させ、抗生物質による治療を開始することが、家庭内での感染の連鎖を断ち切るための、最も確実で、責任ある行動と言えるでしょう。

  • 夜間・休日でも病院へ!緊急受診が必要な危険なサイン

    知識

    突発性発疹は、基本的に予後が良好な病気ですが、高熱を出すという点において、他の重篤な病気との鑑別が、常に重要となります。特に、赤ちゃんの状態が「いつもと違う」「何かおかしい」と感じた場合は、様子を見ることなく、夜間や休日であっても、救急病院を受診する必要があります。保護者の方が知っておくべき、緊急受診が必要な「危険なサイン(レッドフラッグサイン)」を、具体的に解説します。まず、最も注意すべきなのが、「意識の状態」と「機嫌」です。高熱があっても、あやすと笑ったり、目で親を追ったりするようであれば、ひとまず安心です。しかし、「ぐったりしていて、全く活気がない」「呼びかけへの反応が鈍い、視線が合わない」「ずっと眠ってばかりで、刺激しないと起きない」といった、意識レベルの低下が見られる場合は、細菌性髄膜炎や脳炎といった、中枢神経系の重篤な感染症の可能性があります。また、「火がついたように、何をしても泣きやまない」「甲高い声で、異常な泣き方をする」といった、極端な不機嫌も、頭蓋内の圧力が亢進しているサインかもしれず、注意が必要です。次に、「水分補給の状態」です。「母乳やミルクを全く受け付けない」「嘔吐を繰り返す」「半日以上おしっこが出ていない」といった症状は、脱水症状が進行している証拠です。赤ちゃんは、容易に脱水に陥り、重症化するため、点滴による水分補給が必要となります。そして、「けいれん」を起こした場合も、緊急受診の対象です。特に、①けいれんが5分以上続く、②短い間隔で、けいれんを繰り返す、③けいれん後の意識の回復が悪い、④体の片側だけがけいれんする、といった場合は、「複雑型熱性けいれん」や、てんかん、脳炎の可能性があり、迅速な検査と治療が必要です。その他、「呼吸が速く、苦しそう」「肩で息をしている」「唇や顔色が悪い(チアノーゼ)」といった、呼吸困難のサインが見られる場合も、肺炎などの合併を疑い、直ちに受診が必要です。これらの危険なサインを見逃さず、迅速に行動することが、赤ちゃんの命と健康を守るために、何よりも大切です。

  • 突発性発疹と診断、でも発疹が出ない?病院での再評価

    医療

    小児科で、「おそらく突発性発疹でしょう」と言われ、高熱と戦うこと3~4日。ようやく熱が下がったのに、待てど暮らせど、特徴的であるはずの「発疹」が、全く出てこない。このようなケースに遭遇すると、保護者としては、新たな不安に駆られることになります。実際に、突発性発疹と診断(推定)されたにもかかわらず、発疹が出ない、ということは、時々起こり得ます。その理由としては、いくつかの可能性が考えられます。まず、最も多いのが、「発疹が非常に軽くて、気づかれなかった」というケースです。典型的な突発性発疹では、お腹や背中を中心に、誰の目にも明らかな発疹が広がりますが、中には、ごくわずかな発疹が、短時間だけ、体の限られた部分に出ただけで、すぐ消えてしまう、非典型的な経過をたどる赤ちゃんもいます。おむつの中や、背中など、保護者が見逃しやすい場所に出ていた可能性も考えられます。次に、突発性発疹の原因ウイルスには、主にヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)と、7型(HHV-7)がありますが、HHV-7による感染の場合は、HHV-6に比べて、発疹が出ない、あるいは非常に軽い「無発疹性」のケースが多い、という報告もあります。しかし、熱が下がった後も発疹が出ず、しかも、赤ちゃんの元気がない、咳や鼻水がひどくなってきた、といった、別の症状が現れてきた場合は、注意が必要です。この場合は、「最初の高熱の原因が、そもそも突発性発疹ではなかった」可能性を考える必要があります。例えば、「アデノウイルス感染症」や、他の多くの「ウイルス性の風邪」でも、高熱が数日間続くことがあります。あるいは、初期段階では診断が難しかった「尿路感染症」などの細菌感染症が、原因であった可能性も否定できません。したがって、熱が下がった後、24時間以上たっても、全く発疹が出現する気配がなく、かつ、赤ちゃんの全身状態に、何か気になる点がある場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、必ず、もう一度、診断を受けた小児科を再受診してください。医師は、再度、全身の状態を注意深く診察し、必要であれば、追加の検査(尿検査や血液検査など)を行い、最初の診断が正しかったのかどうかを、再評価してくれます。この再評価が、隠れていた本当の病気を見つけ出す、重要なきっかけとなることもあるのです。

  • 子どもの手足口病、第一選択は「小児科」

    医療

    子どもが、熱を出し、口の中を痛がり、手や足にブツブツとした発疹ができ始めたら、まず真っ先に受診すべき診療科は、かかりつけの「小児科」です。なぜなら、手足口病は、その診断から、治療、そして合併症の管理に至るまで、まさに小児科医の専門領域のど真ん中に位置する疾患だからです。小児科を受診する最大のメリットは、その「診断の正確性」にあります。子どもの体に発疹が出る病気は、手足口病以外にも、ヘルパンギーナ、水疱瘡(みずぼうそう)、突発性発疹、麻疹(はしか)、溶連菌感染症など、数多く存在します。これらの病気は、それぞれ治療法や、登園・登校の基準、注意すべき合併症が全く異なります。小児科医は、これらの疾患すべてに精通しており、発疹の見た目や分布(手のひらや足の裏という特徴的な場所)、口の中の所見、そして発熱のパターンや、その他の随伴症状を総合的に判断し、多くの場合、特別な検査をすることなく、臨床診断を下すことができます。また、小児科医は、「子どもの全身状態の評価」のエキスパートです。手足口病で最も重要なのは、口の中の痛みのために、食事や水分が摂れなくなり、「脱水症状」に陥るのを防ぐことです。小児科医は、子どもの体重の変化や、おしっこの回数、皮膚の張り、粘膜の湿り具合などから、脱水の程度を的確に評価し、家庭での水分補給の方法について、具体的なアドバイスをしてくれます。経口補水液の飲ませ方のコツや、点滴が必要かどうかの判断も、小児科医の重要な役割です。さらに、手足口病は、ごく稀に、無菌性髄膜炎や脳炎、心筋炎といった、重篤な合併症を引き起こすことがあります。小児科医は、これらの合併症を疑うべき危険なサイン(ぐったりしている、嘔吐を繰り返す、頭痛を訴えるなど)を見逃さないように、注意深く診察します。そして、もし重症化が疑われる場合には、速やかに、入院施設のある、より高度な医療機関へ紹介してくれます。このように、小児科は、診断、治療、合併症の管理、そして保護者の不安に寄り添うカウンセリングまで、手足口病のあらゆる側面を、包括的にサポートしてくれる、最も頼りになる存在なのです。

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