子どもが、熱を出し、口の中を痛がり、手や足にブツブツとした発疹ができ始めたら、まず真っ先に受診すべき診療科は、かかりつけの「小児科」です。なぜなら、手足口病は、その診断から、治療、そして合併症の管理に至るまで、まさに小児科医の専門領域のど真ん中に位置する疾患だからです。小児科を受診する最大のメリットは、その「診断の正確性」にあります。子どもの体に発疹が出る病気は、手足口病以外にも、ヘルパンギーナ、水疱瘡(みずぼうそう)、突発性発疹、麻疹(はしか)、溶連菌感染症など、数多く存在します。これらの病気は、それぞれ治療法や、登園・登校の基準、注意すべき合併症が全く異なります。小児科医は、これらの疾患すべてに精通しており、発疹の見た目や分布(手のひらや足の裏という特徴的な場所)、口の中の所見、そして発熱のパターンや、その他の随伴症状を総合的に判断し、多くの場合、特別な検査をすることなく、臨床診断を下すことができます。また、小児科医は、「子どもの全身状態の評価」のエキスパートです。手足口病で最も重要なのは、口の中の痛みのために、食事や水分が摂れなくなり、「脱水症状」に陥るのを防ぐことです。小児科医は、子どもの体重の変化や、おしっこの回数、皮膚の張り、粘膜の湿り具合などから、脱水の程度を的確に評価し、家庭での水分補給の方法について、具体的なアドバイスをしてくれます。経口補水液の飲ませ方のコツや、点滴が必要かどうかの判断も、小児科医の重要な役割です。さらに、手足口病は、ごく稀に、無菌性髄膜炎や脳炎、心筋炎といった、重篤な合併症を引き起こすことがあります。小児科医は、これらの合併症を疑うべき危険なサイン(ぐったりしている、嘔吐を繰り返す、頭痛を訴えるなど)を見逃さないように、注意深く診察します。そして、もし重症化が疑われる場合には、速やかに、入院施設のある、より高度な医療機関へ紹介してくれます。このように、小児科は、診断、治療、合併症の管理、そして保護者の不安に寄り添うカウンセリングまで、手足口病のあらゆる側面を、包括的にサポートしてくれる、最も頼りになる存在なのです。