「腎臓」という一つの臓器を対象としながら、「腎臓内科」と「泌尿器科」という二つの診療科が存在することに、疑問を感じる方もいるかもしれません。しかし、この二つの科は、同じ臓器に対して全く異なるアプローチで向き合う、それぞれに専門性を持った診療科なのです。その違いを車のメンテナンスに例えてみると、非常に分かりやすくなります。まず「腎臓内科」は、例えるなら「エンジン専門のメカニック」です。車の心臓部であるエンジンの性能を維持し、内部のコンディションを最適に保つのが仕事です。具体的には、エンジンオイル(血液)の状態をチェックし、汚れていればその原因を探り、ろ過フィルター(腎臓の糸球体)が目詰まりしないように調整します。腎臓内科が扱うのは、慢性腎臓病(CKD)、糸球体腎炎、糖尿病性腎症といった、腎臓の”機能”そのものに関わる内科的な疾患です。治療の中心は、薬物療法(降圧薬、利尿薬など)、食事療法(塩分・たんぱく質制限など)、生活習慣の指導といった、いわば内部からのチューニングです。そして、エンジンが寿命を迎えそうになった時には、透析療法という究極のメンテナンスを管理します。一方、「泌尿器科」は、例えるなら「車のボディや配管を修理する板金・整備工」です。こちらは、車の物理的なトラブルに対応します。ラジエーターに石が詰まってオーバーヒートしたり(尿路結石)、燃料タンクに腫瘍ができたり(腎臓がん、膀胱がん)、配管が細菌感染で炎症を起こしたり(腎盂腎炎)といった、”形”や”構造”に関する問題、外科的な処置が必要となる可能性のある病気を扱います。治療法も、手術で腫瘍を取り除いたり、内視鏡や衝撃波で結石を砕いたり、抗生物質で感染を叩いたりと、物理的・直接的なアプローチが中心となります。このように、腎臓内科は「機能(中身)」を、泌尿器科は「器質(かたち)」を診る専門家なのです。もちろん、両者は密接に連携しています。泌尿器科で腎臓がんの手術をした患者さんの術後の腎機能管理を腎臓内科が行ったり、腎臓内科で原因不明の血尿が見つかった場合に、がんの有無を調べるために泌尿器科に紹介したりと、互いの専門性を尊重し合いながら、患者さんの腎臓を多角的に守っているのです。
腎臓内科と泌尿器科、どう違う?二つの専門科の役割