今から三年前の夏、私は夜中に何度も目を覚ますようになりました。それまでは朝まで一度も起きずに熟睡できていたのですが、一晩に三回、多い時には四回も猛烈な尿意で目が覚めるようになったのです。当初は「もう五十代だし、加齢のせいだろう」とか「夏場で水分を摂りすぎているせいだ」と自分に言い聞かせ、あまり深刻には考えていませんでした。しかし、秋になってもその症状は治まるどころか、日中も一時間おきにトイレへ駆け込むようになり、仕事の会議中も落ち着かない日々が続きました。さらに異常だったのは、いくら水を飲んでも喉の奥がカラカラに乾く感覚です。氷を口に含んでも、冷たいお茶を何杯飲んでも、砂漠に水を撒くように一瞬で渇きが戻ってきました。ある日、妻から「最近、急に痩せたんじゃない?」と指摘され、体重計に乗ってみると、三ヶ月で五キロも体重が落ちていました。特にダイエットをしていたわけでもなく、食欲はむしろ増していたのに、身体がどんどん萎んでいくような不気味な感覚を覚えた私は、ようやく重い腰を上げて近所の内科を受診しました。先生に頻尿と喉の渇き、体重減少のことを伝えると、すぐに血液検査と尿検査が行われました。その場で出た結果は、空腹時血糖値が二百五十を超え、ヘモグロビンエーワンシーも九パーセント近いという、明らかな糖尿病の状態でした。先生の説明によれば、私の頻尿は、高すぎる血糖を排出しようとして身体が必死に尿を作っていた結果だったのです。「夜中のトイレは、身体があなたに送っていた最後の警告だったんですよ」と言われたとき、私はもっと早く自分の異変に向き合うべきだったと深く後悔しました。幸い、その日から食事療法と適切な投薬を開始したことで、一ヶ月も経つ頃には血糖値が安定し、あんなに苦しめられた頻尿も嘘のように消え去りました。夜も一度も起きずに眠れるようになったとき、健康な身体のありがたさを心から実感しました。頻尿は単なる不便な症状ではなく、身体の内部で起きている大きな異変を知らせるメッセンジャーです。もし、かつての私のように、夜間のトイレ回数が増え、同時に異常な喉の渇きを感じている方がいるなら、迷わず病院へ行ってほしいと思います。その一本の採血が、未来の自分を救うことになるのですから。