ヘルパンギーナを一度経験したからといって、もう二度とかからないと安心するのは大きな間違いです。医学的な観点から言えば、ヘルパンギーナは「一生に何度もかかる可能性がある病気」の一つです。その理由は、この疾患を引き起こすウイルスの多様性にあります。ヘルパンギーナの主な原因はコクサッキーウイルスA群ですが、その中には型番がつけられた数十種類の異なるタイプが存在します。また、エコーウイルスや他のエンテロウイルスによっても同様の症状が引き起こされることがあります。私たちの身体は、一度特定の型のウイルスに感染するとその型に対する免疫、すなわち抗体を獲得しますが、他の型のウイルスに対してはほとんど無防備です。夏が来るたびに異なる型のウイルスが流行するため、大人の場合であっても、自分の持っていない抗体の型に出会えば、何度でも喉の潰瘍と高熱に苦しめられることになるのです。技術的な解説を加えますと、これらのウイルスは「プラス鎖一本鎖RNAウイルス」という構造を持っており、非常に変異しやすい性質があります。また、カプシドと呼ばれるタンパク質の殻に包まれているため、外部環境の変化に強く、酸性にも耐性があるため、胃酸を通り抜けて腸内で増殖し、糞便とともに排出されます。この「しぶとさ」が、強力な感染力と繰り返す感染を支えています。大人が何度もかかるもう一つの要因は、獲得免疫の減衰です。幼少期に獲得した免疫も、数十年という長い年月を経て、その記憶が薄れていくことがあります。特に高齢者や、多忙な生活で疲弊した現代人の場合、抗体価が低下している隙を突いてウイルスが侵入します。また、ヘルパンギーナは手足口病と原因ウイルスが一部共通しているため、手足口病を患った後にすぐにヘルパンギーナを発症するといった「ダブルパンチ」に見舞われる不運なケースも散見されます。このような状況において、私たちがとるべき医学的な対策は、特定の型を特定してワクチンを作るよりも、全方位的なバリア機能、つまり「粘膜免疫」を高く保つことにあります。バランスの良い食事と十分な睡眠によって、喉や鼻の粘膜の状態を健やかに保ち、ウイルスの付着を許さない身体作りをすることが、結果として何度もかかる不快な夏風邪への最強の防御策となります。ウイルスの名前と型を知ることは、敵の正体を暴く知的な作業ですが、同時に、自分自身の防御システムがいかに更新し続けられなければならないかを教えてくれる警鐘でもあるのです。
ヘルパンギーナの原因ウイルスと大人が何度もかかる医学的理由