地域医療の最前線で多くの患者さんを診察している内科医の視点から、近年増加傾向にある大人の手足口病について、その対処法と診療科の選び方を解説します。診察室を訪れる大人の患者さんは、一様に「こんなに辛いとは思わなかった」と口にされます。大人が手足口病にかかると、子供のように数日でケロッと治ることは少なく、十日間ほどは社会復帰が困難になるケースが大半です。私たち内科医が診察において最も重視するのは、単なる発疹の有無ではなく、その患者さんの生命維持機能が損なわれていないか、つまり「飲めるか、食べられるか、休めるか」という点です。大人の場合、喉の奥にできる潰瘍状の口内炎が非常に激しく、水分摂取さえ困難になり、救急搬送されるケースも存在します。もしあなたが喉の痛みで全く水が飲めない状態であれば、迷わず内科を受診して点滴による水分補給を受けてください。診療科選びについてよく聞かれますが、高熱や全身の倦怠感が主訴であれば内科、手足の痛みを伴う発疹が主訴であれば皮膚科、という使い分けで間違いありません。ただし、合併症としての髄膜炎や心筋炎の予兆を見抜くことができるのは、全身管理を専門とする内科です。診察では、患者さんの心拍数や血圧、尿量などを確認し、ウイルスが全身に及ぼしている影響を評価します。治療は基本的に対症療法となりますが、痛みの閾値を下げるために非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を処方したり、喉の保護のために粘膜修復剤を用いたりします。また、私たちは患者さんの家庭環境にも注目します。小さな子供がいる場合、家庭内での二次感染を防ぐための衛生指導も内科医の大切な職務です。大人は「自分は大丈夫」と過信しがちですが、疲労やストレスが溜まっている時期の感染は、時に重篤な症状を招きます。受診のタイミングとしては、喉の違和感から発熱が始まった段階で、早めに相談に来ていただくのが理想的です。早期に診断がつくことで、仕事のスケジュール調整や家庭内隔離の準備を迅速に行うことができ、結果として周囲への影響を最小限に食い止めることができます。大人の手足口病は、決して軽視できない全身疾患です。医学的な根拠に基づいた適切なケアを受けることが、早期の社会復帰と後遺症の予防への確実な道となります。