あの日、私はただの「夏の疲れ」だと思っていました。朝から体が少しだるく、右の太ももに虫刺されのような小さな赤みがあることに気づいていましたが、特に気に留めることもなく仕事を続けていました。しかし、昼過ぎになると状況は一変しました。急激に寒気が走り、ガタガタと震えが止まらなくなったのです。検温すると、熱は瞬く間に三十九度まで上昇していました。それと同時に、右の太ももが火を噴くような熱さを持ち始め、ズキズキとした拍動性の痛みが襲ってきました。ズボンをめくって確認すると、朝の小さな赤みは手のひらほどの大きさに広がり、皮膚がパンパンに張り詰めてテカテカと光っていました。指で少し触れるだけで飛び上がるほどの激痛が走り、私はその場に座り込んでしまいました。これはいわゆる「普通の熱」ではないと直感し、這うようにしてタクシーを呼び、近くの総合病院の救急外来へ向かいました。診察室で医師は私の足を一目見るなり、「蜂窩織炎ですね。細菌が皮膚の奥に入り込んで暴れています」と告げました。そのまま緊急入院となり、太い針を通して強力な抗生物質の点滴が始まりました。医師の説明によれば、小さな傷口や毛穴から黄色ブドウ球菌などの細菌が侵入し、皮下組織で爆発的に増殖したことが原因だそうです。熱は三日間ほど下がりませんでしたが、点滴を打つたびに、あの太ももを締め付けられるような痛みと腫れが、潮が引くように少しずつ和らいでいくのを感じました。もし、あの時「明日まで様子を見よう」と自宅で我慢していたら、細菌が血液に乗って全身に回る敗血症という命に関わる状態になっていたかもしれないと言われ、ゾッとしたのを覚えています。退院後も一週間ほどは安静を強いられましたが、今回の経験で痛感したのは、皮膚のわずかな異変と発熱をセットで軽視してはいけないということです。太ももという広大な範囲が炎症を起こすと、身体はこれほどまでに消耗するのかと身をもって知りました。健康な時は意識もしない「肌のバリア機能」の大切さを、私はあの激痛と高熱の記憶とともに心に刻んでいます。今は、足に小さな傷ができればすぐに消毒し、異変があれば迷わず専門医を訪ねるようにしています。自分の身体の悲鳴を、知識という耳でしっかり聞き取ること。それが、突然の病から命を守るための、最も大切な教訓なのだと確信しています。
太ももの激痛と高熱に襲われた私の蜂窩織炎闘病記